みなさんは、「死者の日」というお祭りを知っていますか?
死者の日とは、メキシコで古くから祝われている伝統行事。メキシコ人が愛する、国を代表するユニークなお祭り!
最近では、ピクサーの映画『リメンバー・ミー』でも取り上げられ、世界的に注目されていますね!
死者の日の様子や祝い方については、こちらの記事(『花とお墓と骸骨と…メキシコの「死者の日」は楽しく”死”を想う祭り♪』)で詳しく紹介しました。
今回の記事では、
死者の日の背景にある知られざる歴史、ストーリー、習慣について紹介します!!
「死者の日」の背景
まずは、死者の日の背景について見てみましょう。
歴史的な背景を知ると、死者の日への理解が10倍深まります!!
アステカの時代の死者の日
「死者の日」のルーツは、約500年前に滅びたアステカ文明の時代までさかのぼります。
アステカ国家では、「ミクトランシワトル (Mictlantecihuatl) 」と呼ばれるアステカ神話の女神を主宰とした祭典が行われていました。
女神ミクトランシワトルの仕事は、
- 死者の骨を見守ること
- 死者の祭典を取り行うこと
の二つ。
彼女は、別名「死の夫人」とも呼ばれていました。
(↑)古文書の中で描かれているミクトランシワトル。
ミクトランシワトルの特徴は、以下の三点。
- 麻痺した体(足を引きずって歩く)
- 「星をのみ込むため」に開いた口
- 死者の骨や、人の肉を切るための石製のナイフを手に持っている
一見、ゾンビのようでかなり不気味ですが、アステカの人々にとってはとても重要な神様でした。
現在は、死者の日にミクトランシワトルについて語られることは滅多にありません(不気味過ぎるからか…?笑)。
が、死者の日のルーツを遡って語る時には欠かさない存在です。
このミクトランシワトルを祀るためにアステカの時代に行われていた祭典が、現在の「死者の日」の大元の起源だといわれています。
また、
かつてのアステカの遺跡には、ガイコツの彫刻がたくさん見つかっています。
それだけ当時から、「死者」や「ガイコツ」は身近な存在としてとらえられていたんですね。
植民地化後の死者の日
このように、死者の日のルーツは元々メキシコにありました。
しかし、その祭典の様子は現在の「死者の日」とはまったく異なるものだったといいます。
たとえば、今の死者の日は毎年11月の1,2日に開催されていますが、アステカ時代のミクトランシワトルの祭典は、毎年夏の始めから1か月間行われていました。
そして、
約500年前、ヨーロッパの人々が新大陸(アメリカ大陸)に上陸し、アステカ文明がスペインによって征服されたとき。
カトリック教の祭典である「聖徒の日(11/1)」が、かつて夏に1か月間行われていたアステカの時代の祭典と混ざりあい、現在の死者の日がうまれました。
この「聖徒の日」は、アメリカで10月31日に祝われるお祭り「ハロウィン」とも繋がっています。
なので、死者の日について、
「ハロウィンとは違うお祭り。だけど、ルーツは共通している」
と言われているのは、そのためです。
死者の日の習慣
「死者の日」には、たくさんの伝統的な習慣があります。
この習慣を知ると、死者の日がもっともっと楽しくなります!
オフレンダ(祭壇)を飾る
死者の日には、死者を弔うための「Ofrenda(オフレンダ)」と呼ばれる祭壇を作り、捧げものをする習慣があります。
中には、こんな豪華なものも!(↓)
祭壇は、死者の日において最も大切な要素の一つです。
祭壇には、さまざまな物が飾り付けられます。
- 砂糖でできたガイコツの置物(シュガー・スカル)
- 「Pan de Muerto(=死者パン)」と呼ばれる大きな菓子パン
- 亡くなった家族の写真
- 亡くなった家族の好きだった食べ物や飲み物
- たくさんのマリーゴールドの花
とにかく、モリモリ豪華に飾り付けられます!
お供え物の量が多すぎて、故人の写真が埋もれて見えないなんてことも。(笑)
お墓の飾り付け
死者の日には、死者を迎えるためにお墓を飾りつけます。
その飾り付け方が、もう半端じゃない!!
- ハデにしたもん勝ち
- とにかくにぎやかで明るい雰囲気に!
という気概で、毎年花々で彩り豊かに飾り付けられます。
なんと、街や村によっては「お墓の飾り付けコンテスト」まである場合も(笑)
そして、訪れたいのは昼よりも夜のお墓!
「夜のお墓」と聞くと、怖い印象ですが、死者の日のお墓だけは特別。
何千本ものロウソクが灯され、とても不思議で幻想的な空間に変わります。
マリーゴールドの花
マリーゴールドの花には、
「死者の世界から、死者を祭壇まで呼んでくれる」
という言い伝えがあります!!
なので、マリーゴールドは死者の日に欠かせないお花なんです。
祭壇にも、お墓にも絶対に使われています。
マリーゴールドは死者の日の時期になるとメキシコの田舎で大量生産され、様々な市場で売られているのを見ることができます。
シュガースカル
砂糖でできたガイコツの置物は、シンプルに砂糖のペーストを固めて作ったもの。
メキシコらしく、派手でカラフルなアイシングやアルミホイルで色とりどりに飾り付けられ、額には死者の名前が書かれることもあります。
死者の日が近付くと、様々な市場やお店で売られているのを見つけることができます。
ただ、砂糖の塊なので食べる人はほとんどいないです。(食べたらヤバそう…笑)
なので、基本的にはただの飾りという位置づけです^^
メキシコの小学校では、伝統行事を学ぶために「シュガースカルを作ってみよう!」という授業が行われることもあるそうです^^
スカルメイク
そして最後に、忘れてはいけない死者の日の習慣が、「スカルメイク」!
死者の日の夜には、街の人々はスカルメイクをしてガイコツになりきって街に繰り出します。
中には、ものすごいクオリティの高いコスプレをする人も。
スカルメイクといえども、人それぞれテーマが違って、観ているだけでもとても楽しいんです!
スカルメイクをした子供もとっても可愛いです^^
この日ばかりは、みんな浮かれ気分でもともとフレンドリーなメキシコ人がさらにフレンドリーになります(笑)
というわけで、面白いコスプレやクオリティの高いスカルメイクの人がいたら写真を一緒に撮ってもらう、というのも、死者の日の楽しみの一つです^^
死者の日には、街角でスカルメイクをやってくれるおばちゃんがどこからともなく沢山現れるので、自分もおばちゃんに頼んでメイクしてもらってお祭りに参加するのも楽しいですよ~!
「死者の日」当日の様子
死者の日の当日には、死者の精神が、飾られたオフレンダの食べ物や飲み物の
「スピリチュアルなエッセンス」
を食べにくると信じられています。
なので、死者の日の前までに、人々は過去に亡くなった家族の好きだった食べ物や飲み物、遺品、写真などを墓地に置きにいきます。
そして、当日の夜は、
亡くなった先祖について静かに語りあう家庭もあれば、
故人がお酒が好きだった場合は大いに飲んで盛り上がる家庭もあります。(笑)
楽しみ方は、人ぞれぞれです。
一部の古い伝統を守る人びとは、18〜19世紀から続く伝統である「calaveras(頭蓋骨)」と呼ばれる短い詩作りをします。
詩の内容は、
- 死者の面白い逸話
- 死者の習慣、「あるある」や、癖
についてです。
また、街によっては死者の日のパレードやステージショーが行われることもあります。
死者の日で有名な街(オアハカなど)に行くと、豪華なパレードやイベント、ショー、お墓の飾り付けコンテストなど楽しみが盛りだくさんなので、とてもおすすめです。
まとめ
死者の日には、あまり知られていない歴史や、さまざまな習慣があります。
それを知って死者の日にメキシコに行けば、
ただ「単純に楽しい」というだけでなく、メキシコの歴史や伝統文化を感じながら楽しむことが出来ると思います^^
死者の日とは、
故人の死について悲しみに暮れるのではなく、故人と一緒にこの日をただ楽しんだり、生前の故人について思い出を共有し、それによって家族のきずなを深めるための日。
こんな風に、
地域や家庭によってさまざまなスタイルや楽しみ方の違いはあれど、
明るく楽しい話と雰囲気で死者を迎え入れ、生前のように家族団らんの時間をもうけること
が、「死者の日」の本当の目的なのです^^
以上、知ればより楽しめる、「死者の日」の歴史と習慣についてでした。
「死者の日にメキシコに行ってみたい!」
という人は、この記事(↓)をよかったら参考にしてみてください^^