ずっとずっと公開を待っていた、ディズニー・ピクサーによる『リメンバー・ミー』。
ついに映画館で見てきました!!!
ついさっき近くのイオン(笑)で見てきて、すぐに帰宅⇒いまパソコンの前という流れで、
感動が消えないうちに、タイトル通り、「メキシコ好きなわたしがこの映画を見た感想」を、感動が倍増するようなウラ話と共に綴ってみようと思います。
この記事の後半はネタバレを多少含むので、もし「まだ見ていない」という人は、前半だけ読んでみてください^^
感想と10倍感動するための話を読みたい人は、⇓のもくじから「『リメンバー・ミー』を観た感想」にスキップして読んでください^^
もくじ
『リメンバー・ミー』とは
この記事を読んでいる人はもうご存知かもしれませんが、
『リメンバー・ミー』は、あのディズニー・ピクサーがメキシコの実在する伝統行事「死者の日」にインスパイアされて生みだした物語です。
そしてその「死者の日」は国を代表する「最もメキシコらしい行事」としてメキシコ人に愛されているお祭りです。
あらすじ
もう映画を見た人は、読まなくても大丈夫です!(笑)
主人公の「ミゲル」は、音楽を愛しミュージシャンを夢見るギターの天才。サンタ・セシリアという町に、靴職人の家族と住んでいます。
しかし、そのミゲルの家族は音楽が大嫌い。
それは、ミゲルのひいひいおじいちゃんにあたる人が、「音楽家になる」という夢のために家族を捨てたという家族の悲しい歴史からくるものでした。
とくにミゲルの祖母であるエレナおばあちゃんは音楽を毛嫌いし、かわいい孫のミゲルから音楽をとにかくむりやりに遠ざけようとします。
ミゲルは、そんなエレナおばあちゃんや家族から隠れるように秘密基地で一人ギターの練習をしており、この秘密を知るのは野良犬の相棒・ダンテだけでした。
ある日、サンタ・セシリアの町で「死者の日のギターコンテスト」が開催されると知り、ミゲルは尊敬してやまない伝説の歌手エルネスト・デラクルスによる有名な言葉「チャンスを掴め!」を胸に、そのコンテストに思い切って参加しようとします。
ちょうどその日、ミゲルはご先祖たちの写真が飾ってある家の祭壇を倒しそうになり、はずみで倒れ壊れた写真立てから出てきた写真を見て
「自分のひいひいおじいちゃんがエルネスト・デラクルスかもしれない。だから自分はこんなにも音楽が好きなんだ!!」
と大興奮。その勢いで家族にコンテストに出ることを話すと、エレナおばあちゃんは、怒りのあまりミゲルの大切なギターを壊してしまいました。深く傷ついたミゲルは、「こんな家族なんかいらない!」と叫び、家を飛び出します。
死者の日でにぎわう町の中心地にコンテストに参加するため向かいますが、コンテストにはギターが必要。貸してくれるよう頼むも、誰も貸してくれません。
ふと思いついたミゲルは、死者の日の飾り付けでにぎやかなお墓を走りぬけ、そのままエルネスト・デラクルスの霊廟へと向かいます。
窓を割って霊廟に偲びこみ、エルネスト・デラクルスのギターを思わず手にとり奏でた瞬間、ミゲルのは死者の世界に迷い込んでしまいます!
生きている人にはミゲルの姿は見えず、そしてミゲルはお墓に訪れている数々のガイコツたちを目にして仰天。彼らは、死者の日にだけ「死者の国」からやってきた、この町の人達の亡くなった家族なのです。
偶然にもお墓で、かつて亡くなった家族たちに出会ったミゲルは、この状況をなんとかするために、亡くなった家族に導かれ、「生者の国(この世)」と「死者の国(あの世)」を繋ぐマリーゴールドの花でできた巨大な橋を渡って死者の世界へ。
そこから、偶然出会った相棒のガイコツ「へクター」と、なぜか唯一ミゲルの姿を認識できるダンテと共に、ミゲルの奇想天外な冒険が始まります。
その死者の国での冒険は、ミゲルを家族の「ある秘密」へと導いていくのでした…。
登場人物とキーパーソン
登場人物は、主にミゲルの家族のメンバーたちです。
図にまとめてみました。
ミゲルの家族はこんなかんじです。(↑)
ちょっとディズニーのコピーライトに引っかかるといけないので、画像がないのがわかりにくいですが…(笑)
ものがたりの中で重要になるキーパーソンは、黄色で囲ってあります。今回は、ミゲルのお父さんやお母さん、おじいちゃんはあまり出てきません。
生きている家族のなかでは、家族を厳しく取り仕切るエレナおばあちゃんと、そのお母さんにあたる見ゲルのひいおばあちゃんママ・ココが特に重要です。
さらに、ほかに重要なキャラクターとしては、こんなかんじ。
特にヘクターは超・重要人物です!
死者の国で、ミゲルの冒険の相棒になります。ポスターにも載っていますね。
陽気で、でも孤独なへクターは、生きている世界で自分が忘れ去られることを恐れています。
なぜなら、誰もその人のことを思い出さなくなった時、そのままその人は死者の国からも消え去ってしまうから…。
ヘクターは、もうあと少しで全ての人から忘れ去られ、死者の国からも消える寸前の状態なのです。
ヘクターは、ミゲルが死者の国でエルネスト・デラクルスを見つけて生者の国に戻るのを助ける代わりに、ミゲルに「ある願い」を託します…。
あとは、死者の国ではメキシコを代表する超有名女性アーティスト「フリーダ・カーロ」も登場します。
日本語版の声優は、あの渡辺直美さんですよ~。
しかも、めっちゃいい声だった…!(笑)
映画館にて
朝イチで行ったのに、家族連れを中心にめちゃくちゃ混んでたので、みんなリメンバーミーか?!と思いきや、ほとんどプリキュアでした。(笑)
それでも、ちょくちょくリメンバー・ミーのミニポスターが飾ってあり、ワクワク。
あと、リメンバー・ミーのグッズめっちゃありましたよ…!
キーホルダー、Tシャツ、ノート、マグカップ、かばんなどなど。
グッズは買わなかったけど、720円のパンフレットだけ買いました。映画のパンフレットとか買ったの何年ぶりだろうか…。
この写真では、内容読めないくらい画素荒くしちゃってますが…。
こんな感じで40ページくらいあります。
キャラクターの詳しい紹介、インタビュー記事、メキシコの豆知識ページなど、このパンフレット、想像以上に内容めっちゃ充実で読んでて楽しいのでおすすめです!!
あとグッズ一覧ページもありました。ネット販売もしているようです。最近のグッズ販売はすごいなあ。
『リメンバー・ミー』を観た感想
まず、『リメンバー・ミー』は、メキシコ好きの間では1年以上前からその存在を知られ、「まだかまだか」とず~っと待ち続けてきた映画でした。
この映画の最初の公開は、この物語の舞台になったメキシコだったですが、
とにかくメキシコにいる人がうらやましくて仕方なかったですわ…。
しかもみんな絶賛してるし。
その後、こんな感じで公開され。(↓)
- 2017年10月20日 メキシコ:モレーリア国際映画祭 (初公開)
- 2017年10月27日 メキシコ
- 2017年11月22日 全米
- 2018年1月19日 イギリス
- 2018年3月16日 日本←やっと!!!
日本おそっ!っていう。
でも、これは毎度のことなので。
わたしはそんなに映画好きではないので「映画の公開を楽しみに待つ」、ということもめったにないのですが、今回ばかりは本当もどかしい気持ちでした。
映画好きの人は観たい映画もたくさんあるだろうから、
「彼らはこのもどかしい気持ちをずっとたぎらせているのか…」
と思うと、日本の映画好きたちの忍耐強さに畏敬の念が湧きました。(笑)
しかも、一緒に上映されるアナ雪の続編みたいなやつ、思いっきりクリスマスの内容…。この、季節外れ感…。(笑)
さて。
前置きはこのへんにして。
『リメンバー・ミー』、本当に感動する素晴らしい映画でした!
とにかく、物語のいろんな場面でこみあげさせられるので、大変でした。。
物語のわりと序盤から周辺からグスグス音が聞こえてきていたし、最後のほうはみんな泣いていたと思います。
わたしの左隣の一人で来ていたおじいさんも、その向こうの少年たちも、右隣の子供も。。
ただ、かなり執拗な事前リサーチをしていたため物語のオチというか、そのへんは想定内でした。
それでもめっちゃ泣いたけどね。
これだけ長い期間待ち続けて、相当自分の中での作品のハードルが上がってもなお、
「すごくよかった!!!」
って素直に思えたのは、本当に素晴らしい映画だったからこそだと思います。
(実は見る前、「ハードルあげすぎたかも、、どうしよう、観てガッカリしたら。」って無駄に心配してました。。ピクサーを舐めるな!って話ですね。)
物語自体への感想は人ぞれぞれだと思うので、
ここからはメキシコ好きな者としてこの映画を観て思ったこと、発見、考えたことを、裏話など踏まえていろいろ書いていこうと思います。
そして、ここからはネタバレをガンガン含んでいくので、映画を見た人だけどうぞ!
1.知ってる実在スポットめっちゃ出てくる!!
実はこの映画、メキシコの有名な見どころがめっちゃ出てきてます。
「これはもはや、メキシコの観光プロモーション映像なのでは…?」と思うほど。(笑)
メキシコを旅行したことがある人は、行ったことがある場所や知っているスポットが出てきたりして、すごく嬉しくなったのではないでしょうか?
というかこの感動味わってほしい!
メキシコ旅行した人にこそ、ぜひ見てほしい!!(笑)
そして、
旅行したことない人はモデルスポットが実在するってことを知って、行ってみたいって思ってほしい!(笑)
とりあえず、事前調査で
- グアナファト
- ハニツィオ島
- オアハカ
の三つの場所が舞台になっていたことは知っていました。
それについては、こちらの記事(『『リメンバー・ミー』の舞台になったメキシコの3つの街が美しい!』)でも紹介しています。
ちょっとココでも紹介します。
まず「グアナファト」は、「世界一カラフルな街」として世界的に有名です。
ピクサーの制作チームはここを訪れ、
- 街自体のカラフルさ
- 夜景の美しさ
- 街全体の立体感
を、死者の国の構想に取り入れたんだそうです。
そんなグアナファトは、こんな街!!
よく、「まるで、おもちゃ箱をひっくり返したよう」と形容されるとおり、
本当カラフルで積み木が積み上がったような立体感のある街なんです。
カラフルな壁が眩しく、散歩が本当に楽しい街です!
路地は入り組んでいて坂がとても多いので、迷子になりますがとにかく街歩きが楽しい!!
ただ、リメンバー・ミーの中でミゲルが滞在していた「死者の国」は夜の設定だったので、最も近いのは夜景です。
ここ、「メキシコNo.1の夜景」といわれています。
立体感があるので、あの息を飲む「死者の国」のような景色になるんです。
ここをわたしが訪れたときの感動は、本当に忘れられません^^
(↑)路地を手らす街灯も、またいい雰囲気を生みだしています。
ミゲルの迷い込んだ死者の日は、この夜景をさらに立体的に、カラフルに、ワンダフルにした感じでした。
あれは、日本的な死後の世界イメージ(花畑とか、空の上とか)とはかけ離れてますが、あれはあれで楽しそうですよね。(笑)
さて、、
では、
次のモデル地を見てみましょう。
「ハニツィオ島」は、死者の日がとても有名。
製作スタッフは、ここで「最も伝統的な死者の日」を見に行ったのだそう。
ミゲルの住む町「サンタ・セシリア」での死者の日の様子とかなり似ています。
お墓、たくさんのロウソク、人々。。
これぞ、死者の日!って光景を見ることができます。
さらに、死者の日の様子はオアハカでの調査もしているようです。
さて、ここまでは、『リメンバー・ミー』のモデルになっていると知っていました。
が!
さらに!
まさかセノーテも出てくるとは…!
完全に予想外でした。
セノーテとは、ユカタン半島に数千か所存在する、洞窟の中にある淡水の泉です。とても有名な観光スポットで、洞窟型、川型、鍾乳洞型など、様々なセノーテがあります。
『リメンバー・ミー』の映画のなかでは、
エルネスト・ベラクルスが実はヘクターに毒を盛った犯人だったことがわかり、ヘクターとミゲルを閉じ込めた水のある洞窟、、あそこがセノーテでした!
だって、完全に一致してる!!
ユカタン半島のバジャドリッドという町の近くにある、「サムラ・セノーテ」と呼ばれているところです。
あまり有名ではなく、わたしも実際に行ったことはなかったのですが、それでも「数あるセノーテの中でも神秘度No.1」ということでなにげに注目していたセノーテでした。
ここが出てきたときには、
「うわ!!!!ここ!!!サムラ・セノーテやん!!!」
と、物語的には最悪の状況であるにもかかわらず、ひとりでめっちゃテンションが上がってました。
あとは、
オアハカにあるサポテコの遺跡、「モンテ・アルバン」は、死者の国の作りに取りこまれていました。
こういうピラミッドの階段を、ミゲルとヘクターが一緒に降りていくシーンがありますよね。
と、
こんなかんじで、
メキシコのスポットがたくさん出てきて、終始テンションが上がりっぱなしでした!
一応ものがたりは「架空の世界」ということにはなっていますが、モデルになった場所は実在する!って思うと、ワクワクしますよね^^
2.メキシコの文化をしっかり感じられる!
メキシコの文化をしっかり感じられるようになっているのもこの作品のグッド・ポイントでした!
わたしはメキシコ文化を研究しているので、特に強くメキシコの文化要素を目ざとく探してしまっていたのかもしれませんが、メキシコについて何も知らない人にとっても「メキシコ文化」を感じられる作品だったと思います!!
リメンバー・ミーは、メキシコの「死者の日」という11月に実際にお祝いされている伝統行事が主題テーマになっているので、その死者の日の伝統はしっかり描かれていました。
たとえば、「祭壇」を作る点。
死者の日の祭壇には、
- 亡くなった人の写真
- 亡くなった人の好きだった食べ物や飲み物
- 死者の日の伝統料理(地域に寄ってことなる)
- シュガースカル(砂糖でできたガイコツの置物)
- マリーゴールドの花
などで、モリモリ&にぎやかに飾られます。
ミゲルの家族の祭壇も、かなり豪華に飾られていましたね!
現在は、メキシコの中でも伝統行事をあまり重視しない家庭も増えたので、あんなふうに家の中に豪華な祭壇を作る家庭はかなり珍しいです。
ちょうど日本でわざわざ「ひな人形」を完璧に10段などで飾る家庭が少ないように、最近は簡単に片づけられるような簡素な祭壇や、飾らない家も多いんです。
なので、あんなに巨大で豪華な祭壇を飾るミゲルの家族は、伝統をとても大切にする家庭なんだと思います。
あとは、この物語のキーである、
「家族を何よりも一番大切にする」
という点は、とてもメキシコ的(というか、ラテン的)価値観だと思います。
これは、監督のリー・アンクリッチ氏もとくに丁寧に描きたかった点なのだそうです。
そのために、監督と制作チームは、メキシコのさまざまな一般家庭の元を何度も訪れ、「メキシコの家族愛のあり方」を調査し、さらにラテン系のスタッフやコンサルタントに細かいヒヤリングをし、「家族の価値観」をじっくり定めていったそうです。
しかし、この物語のテーマは死者の日ですが、本当のテーマは
「生と死を超えた家族の絆」。
「メキシコの家族らしさ」を描きながらも、すべての人が理解できて共感できる「普遍的な家族愛の姿」を描くという「軸」はブレなかったわけです。
バランス力すごい!!
だからこそ、きっとメキシコのことを何も知らないだろう私の右隣にいたチビっ子も、左隣で一人で来ていたおじいちゃんも号泣だったわけですね…。
ちなみに、ミゲルの家族は靴職人でしたが、このように
「家族ぐるみで職人(=仕事もプライベートも家族と一緒)」
という状態も、メキシコ、特に田舎のほうではよく見られます。
あとは、ミゲルの家族の
「音楽嫌い」
という要素は、
メキシコにいたら「どれだけ異常なことなのか」がよくわかるかもしれません。(笑)みんな本当に音楽が好きなので^^
言語について
最初の公開はメキシコでしたが、この『リメンバー・ミー』の原作というかオリジナルは英語なので、キャラクターの口の動きは、英語のセリフに合わせてあります。
この映画が、アメリカのアニメーション映画の歴史において衝撃的だったのは、
「わざわざすべてのセリフを英語にせず、スペイン語の単語をそのまま使っている」
という点!!
これ、アメリカの映画業界ではめちゃくちゃ画期的なことなんです!!!
今までに、ピクサーのような大手のアメリカ映画がスペイン語のセリフを盛りこむことはありませんでした。スペイン語圏を舞台にしていた場所でも、絶対にすべて英語で説明されていたんです。
映画界の「英語至上主義」ともいいましょうか。
アメリカの公用言語は英語だから、当たり前だと思うかもしれません。
が、実は、「英語ができずスペイン語しかわからない状態でも、アメリカで不自由なく生きられる」という説もあります。
実際問題アメリカの田舎の方ではムズカシイかもしれませんが、ニューヨークなどの大都市や、ヒスパニック人口の多い南部(カリフォルニアやテキサスは特に)では、スペイン語オンリーで生きられます。
わたしがニューヨークで住んでいた地域も、基本的に完全スペイン語でした。スーパーでもレジではスペイン語で話しかけられましたし…。(笑)
それくらい、スペイン語はアメリカにおいて大きな地位を確保しているはずなんです。
しかし、アメリカ合衆国の中でヒスパニック系やラテンの人々は、今の時代でも差別的に語られることがあります。(アメリカ国民の中でも圧倒的な多数派なんですけどね…。)
なので、彼らにとって、『リメンバー・ミー』の「スペイン語をそのまま使う場面を増やす」という挑戦は、とても大きな価値を持つものでした。
なぜなら、ついに彼らの文化の一部であるスペイン語がアメリカの巨大映画産業の中で認められたということだから!!
そんなわけで、
- 「多様性を受け入れる」
- 「欧米以外の文化を正当に評価する」
という点でも、この映画はとても高い評価と注目を受けています。
しかも、日本語バージョンだとわかりませんが、実は英語バージョンのメインの声優はほぼ全員ラテン系(=スペイン語ネイティブ)なんですよ~。
この辺は、制作側に強い「こだわり」があったようです。
そういえば、ハリーポッターのJ.K.ローリングも、
「キャストは絶対に全員イギリス人で!!!」
ってこだわってましたよね。
物語の世界観をしっかり作りだすために、言語の癖や喋り方は、きっととても重要なんですね。
ちなみに。
英語バージョンほどではないにしろ、日本語バージョンでも、そのままスペイン語がセリフに使われている部分はたくさんありました!!
たとえば、
- Hola オラ(こんにちは)
- Gracias グラシアス(ありがとう)
- De nada デナダ(どういたしまして)
など。。
あと、
- Mariachi マリアッチ(メキシコ流のミュージシャン)
- Alebrije アレブリヘ(架空の動物。木彫りと張り子のものが実際にメキシコのお土産として人気。)
- ~ito(a) ~イート(or~イータ)(例えば、ミゲルのことを「ミゲリート」と呼ぶなど。メキシコ流の「ミゲルちゃん」、のような言い回し。)
など、メキシコ特有の単語もそのまま使われていましたね。
(もっとあった気がしたけど、忘れました。笑)
スペイン語がわかる人口がアメリカと比べて圧倒的に少ない日本においても、こんな風にスペイン語のセリフや単語が残されていたことに、とても感動しました。
そんなわけで、
この映画は、前知識を全くナシに見ても最高に楽しめますし、物語自体の感動は全員が同じレベルで感じることができるもので、
メキシコの文化やスペイン語を知っていればさらに深く楽しむことのできる、とっても奥深い物語なんなあと感じました!
3.リー・アンクリッチ監督、頑張った!!
なんか、こう言うとめっちゃ上から目線に聞こえてしまうかもしれませんが…(笑)
ものがたりを見終わり、エンドロールで
「Lee Unkrich」
の文字が最初に流れてきた瞬間、
心から「がんばったね!!!!!」という思いで涙があふれるほどでした。
というのもこの映画自体、リー・アンクリッチ監督にとってはめちゃくちゃ大きな挑戦だったと思うんです。
挑戦ポイントはいっぱいあるんですが…。
まず、この映画がディズニー・ピクサー史上初めて、実在するマイナーカルチャーをテーマにした映画だったという点が挙げられます。
今までピクサーはいろんなアニメーション映画を世に生みだしてきましたが、実在の文化を映画にすることはありませんでした。
なぜなら、ピクサー映画の世界への影響力が強力な分、「間違った文化知識や偏見を植え付けてしまう可能性がある」からです。
当たり前のことですが、実在する文化にはすべてその文化を大切にしている人々が存在します。
なので、極端なことをいえば、「触れない方が安全」なんです。
だって、ミスしたら炎上しちゃうかもしれないし。さらには、その文化への偏見を世界中の子どもに植え付けてしまうかもしれない。
たとえば、ピクサーが日本を舞台にした映画を作って、そこに「めちゃくちゃステレオタイプな日本」が描かれていたら、日本人的にはちょっと萎えませんか?(笑)
フジヤマを舞台に、ニンジャとゲイシャとサムライがどうこうなる、、的な。
「日本をちゃんと知らない人が作っただろコレ!!これは本当の日本じゃないぞ~!!」
って思うし、なんだかガッカリすると思います。
とりあえず、わたしはします^^;
こういうのは今世界的に問題になっていて、特に欧米の文化人の間ではかなりアツく議論されています。
「ステレオタイプな○○人や地域像が描かれること」
は、もう世界的に避けるべき流れなんですよね。
しかも、そのようなステレオタイプ問題に特に敏感なのが、ラテン系の人々なんです。日本ではあまり感じないかもしれませんが、欧米では多くの人がその流れを認識しています。
だから、実はこのラテンの伝統である「死者の日」を取り扱うことは、超絶リスキーな挑戦だったんですよね。
あと実は、この『リメンバー・ミー』、一回ホントに頓挫しそうになったこともあるんです。
それは、ディズニーの大きなミスによるものでした。(なんかプロジェ●トX風になってしまいましたが…笑)
ディズニーはピクサーの親会社にあたるわけですが、何か新しい作品を作る際、ディズニー専属の弁護士たちが作品のタイトルを「コピーライト登録」します。
「ディズニーは、使用権にめっちゃ厳しい」
というのは有名な話ですが、やっぱり世界中でコピー商品や偽物が作られるので、保護のためにかなり前段階(早いときは、制作計画段階など)に登録してるんです。
しかし、
コピーライトの登録申請情報や、その結果(合格か不合格か)は、ディズニーだろうがどこかの個人だろうが全て一般公開されているので、
「ディズニーがどんな映画を作ろうとしているか」
くらいは、なんとなくわかるんです。
(だから、もし数年後のディズニーの新作品のタイトルを知りたいときは、そのコピーライト登録申請を見ればいいんです。そこまで熱心なファンがいたらスゴイですが。笑)
そして、その時ディズニーが考えていたタイトルは、「Dia de los muertos」「Day of the dead」=死者の日でした。
伝統行事の名前をそのままタイトルにしようとしていたわけですね。
ディズニーが伝統行事の名前でコピーライト登録申請を出したのは、2013年5月でした。なので、今から約5年前ですね。
これが、ものすごい大炎上しました。
なぜなら、「ディズニー」という大きな力を持ったアメリカの会社が、他の国の祭りをコピーライト登録しようとしている…。
これが、
「なんでディズニー、他の国の文化を勝手に自分のモノにしようとしてるの?」
となったわけです。
実際、もし「死者の日」でコピーライトが取れてしまったら、極端なことを言うと
「伝統行事を行うのに、ディズニーの許可を得ないといけない」
という意味のわからない状況になってしまうわけです。
例えば日本でいうと、「お盆」という祭りをテーマにディズニーが作品を作り、コピーライト登録することで、わたしたち日本人が、
- 普通にお盆を過ごしたり、
- お盆のイベント(?)を開いたり、
- お盆グッズを作ったりするたびに、
なぜかディズニーの許可を得なければならない…という状態です。
日本人としては、いやそれ元々わたしたちの文化ですけど!ってなりますよね。
というわけで、
「自分たちの文化が、ディズニーに奪われる!!!」
という危機感を持ったラテン系の人々が、ディズニーの「死者の日コピーライト登録」に猛反発しました。
「Change.org」という、オンライン署名を集めるウェブサイトでも、ディズニーへの反対ページが立ち、「ディズニーのしようとしていることは、最悪の文化搾取だ」と主張され、一週間ほどでなんと21,000人もの署名が世界中から集まりました。
これはもう完全に、
「ディズニーやっちまったな」
って状態です。
しかしディズニー側も、その炎上にすぐに気付いて申請を取り下げます。
そして、代わりに「Coco(リメンバー・ミーの英語タイトル)」という、祭りの名前を含まないタイトルに変更して再申請を行いました。
このプロセスには、ピクサーやリー・アンクリッチ監督は直接関わっていません。
が、
この事件が起こったことによってリメンバー・ミーは、一般ラテン人による超厳しい監視の目にさらされる運命に置かれたわけです。
「文化的搾取」や「知的財産権」は、いま特に国際人権基準や国際法でもアツ~く語られているテーマです。(実はわたしもこの間それについて論文を書いて、この映画の件も調査しました。)
今まで、世界中で相当な数の「文化搾取」が起こってきてますからね。。特に、植民地時代を経験したラテンの人達は、かなり敏感です。
なので、「慎重になりすぎることはない」ってくらい、慎重になるべきなんですね…。
リー・アンクリッチ監督はその事件に加えて、自分自身が白人でラテンのアイデンティティもないことから、
「そんな自分が、他者の文化を描いていいのか」
とかなり心配し、悩んだんだそうです。
制作チームやディズニーからも、何度も
「テーマを変えよう」
という意見が何度も出たそうで。
それでも、
「恐れや保身に走っていたら、良いものは生まれない。クリエイティビティは制限されるべきではない!」
という強い信念を胸に、
現地へのフィールドワークやラテン系の人々の価値観調査、通常は絶対に秘密にしている制作段階をラテンの人々にあえて共有して意見をもらう、など、
とにかく「本物を伝えるため」、「文化の中の人(=ラテンの人)に愛される作品にするため」に、やれるだけのことをやったんだとか。
このエピソードと監督の覚悟を知った時は、
この人、めっちゃかっこいいな!!
って思いました。
すごい信念。
すごい努力。
しかも、彼は有言実行しました。
なんとこの映画、全米初登場第一位を記録し、
「ピクサー至上、最高傑作!」と絶賛され、
しかも、
メキシコの映画至上No.1を記録しました!!
過去の「すべてのメキシコの映画」の中でイチバンですよ。すごすぎる!!
つまりアンクリッチ監督は、
ちゃんと、現地の人に認められ、愛される映画が作れたわけですよ!!!
だから、
それを知った上で、
実際に自分がやっとこの作品を見て、
想像以上に素晴らしい映画で、
しかも映画館にいる人達がみんな、泣きまくっているのを感じたとき、
「監督のクリエイターとしての信念と努力が、こんなに大きな感動を生んだんだ」
って思うと、なんだか涙があふれてきて…。
う、ううう…
よくがんばった!!!
という、感想に至ったわけでした。笑
4.メキシコへの明るいイメージを生みだす起爆剤に
さいごに。
この映画は、メキシコの明るい未来を作りだす起爆剤になるのではないかと思います。というか、そんな希望と願いが詰め込まれた作品だと思うんです。
最近のメキシコは、ボロボロでした。
- メキシコペソは暴落しているし
- トランプ政権になってから「壁を作る」発言をはじめとにかくディスられ、
- NAFTAなどの重要な政策の継続も危機的状況で、
- 去年の夏には世界を騒がすレベルの大地震もありました。
そんな中で、
地震の影響から観光客の数も激減し、
「いつになったら、メキシコに明るい未来が訪れるのか?」
と、モンモンとした不安を多くの国民が抱えていたことと思います。
そんな中で、
- メキシコの文化という簡単には変わらない価値を、世界に認められる機会を得たこと。
- はじめて、世界の主要映画産業の中で自分たちの文化がポジティブに描かれたこと。
これらは、本当に大きな意味を持つと思うんです。
「メキシコがテーマの映画」は、いままで描かれるイメージが決まっていました。
特に、アメリカをはじめ世界規模の映画産業の中では、「マフィア」や「麻薬戦争」、「暴力」、「不法入国」など、そんな暗いイメージで描かれることが多かったんです。
わたしのメキシコ人の友人は、
「正直、この国がそんな風にステレオタイプで描かれるのは慣れてるよ。それでも、自分たちの国がそんな風に描かれるのはやっぱりすごく嫌だよね。」
と話していました。
そんな中で、
世界的に「メキシコの文化」が広まる機会として『リメンバー・ミー』はとても大きな意味を持つと、わたしは信じています。
この作品には、わたしの大好きなメキシコがいっぱい詰め込まれていました!!
- ワクワクするような街並み、
- 大自然、
- 家族への深い愛、
- 死者の日という伝統文化、
- そして、素晴らしいメキシコの手仕事も…。
だから、「いちメキシコ好き」としてもとても楽しめましたし、
現代の世界や、メキシコを取り巻く様々な問題や状況を考えても、監督の心意気、そしてこの作品が持ち得る意味は、とても大きなものだと思うんです!!!
まとめ
『リメンバー・ミー』を観て、
「メキシコって面白い!!」
「行ってみたい!!」
って思う人が純粋に増えればいいなあ、って思います。
この記事も、
「あの映画を見た人の感動がより深まりますように。そしてあわよくば笑、”メキシコに行ってみたい”って気持ちになってもらえますように!!」
という願いを込めて書きました^^
以上、長~~い記事になってしまいましたが、メキシコ好きのわたしによる『リメンバー・ミー』の感想でした。
リメンバー・ミーのファンの人へ。(笑)
わりと最近のことなのですが、「リメンバー・ミーのアートブックなるものがもうじき(4月中旬)解禁される」と聞き、ちょっと高いけど即・予約しちゃいました!!
ためしに覗いてみたら、
「これはめっちゃ期待できそうだわ…買うしかないわ…」
ってなったのでぜひチェックしてみてください。(笑)
まだ届いていなくて2018年4月18日に解禁&家に届くらしいので、ワクワクしてます♪
↑ささやかながら、リメンバー・ミーファンへの情報シェアでした。
ここまで読んでいただき、ありがとうございましたm(_ _)m
「もっと知りたい!」という人は、こちらの記事もよかったらどうぞ^^