絶対に行ってはいけない!メキシコ「テピト(テピート)地区」の様子。



メキシコには、「絶対に行ってはいけないエリア」があります。

首都・メキシコシティーの中心部にある「テピト(テピート)地区」は、そのうちのひとつです。

「Tepito(テピト)」とは

テピト(テピート)地区とは、メキシコシティの歴史地区のすぐ近くにあるメキシコシティで最も危険なエリアです。

メキシコシティーの中には、いくつか「行ってはいけない危険エリア(⇒メキシコシティーで絶対に行ってはいけない「危険エリア」5選」があるのですが、テピト地区はその中でも「最も危険な場所」といわれています。

現地のメキシコ人も絶対に近づかない場所

現地に住むメキシコ人でも近づかず、タクシードライバーもこのエリアは避けて運転します。それほどこのエリアが危険だということです。

わたしも、テピトの存在についてはメキシコシティに住む友人から聞きました。特に、明らかに見た目が外国人な観光客は、テピトに近づくのは避けた方が無難です。

過去にも、通りがかったタクシーが強盗に襲われたり、中の観光客が降ろされて持ち物を全て盗まれたりするなど、メキシコシティを訪れる観光客にとっても他人事ではない悪質な事件が起こっています。

テピトの概要

首都メキシコシティーの中心部にある、地下鉄「Tepito(テピト)」周辺の地域です。

別名、「Barrio Bravo(バリオ・ブラボ)=気性の激しい/険しい地域」とも呼ばれています。

現在は、はっきりとはわかっていないのですが、3万8,000人~12万人の低所得層の人々が住んでいると推測されています。この数字の範囲の広さはナゾですが、おそらく政府ですらちゃんとした調査を行えないような状況なのでしょう。

テピトの大通りは一般のメキシコの市場のように活気があるのですが、奥には「ブラックマーケットが広がっている」といわれ、メキシコシティーの中でも犯罪発生数が極端に高い場所として知られています。

テピトの歴史

アステカ文明のことから低所得者居住区

実はテピトは、昔から「低所得者の住む地域」といわれてきました。

その歴史は、なんと500年以上前のプレ・ヒスパニック時代(アメリカ大陸発見以前)にまでさかのぼります。その時代から、この地域の治安は比較的悪かったようです。

ただし、アステカの頃はさすがに現在ほどの治安の悪さではありませんでした。現在ほど治安が悪くなってしまったのには、ほかに理由があります。

「テピト」という名前の由来

ところで、この場所の名前の由来には、二つの説があります。

一つ目は、「Nahuatl teocali-tepiton(アステカ語で小さな教会・チャペルという意味)」から来たとする説。

もう一つの説には、面白いストーリーがあります。

昔から治安の悪かったテピト地区。ある日、警察グループが潜入捜査に入る際、仲間にこう言いました。

「Si veo a un ratero te pito.(もし盗人を発見したら、お前に笛で知らせるよ。)」

このセリフの最後の2単語「te pito(お前に笛で知らせるよ。)」の部分を取って、「Tepito」になった、という説です。テピトでは、警察が笛を吹かなければいけない緊急事態がとても頻繁に起こるため、このような説もまことしやかに噂されています。しかし、由来として信憑性が高いのは、一つ目の説の方だそうです。

テピトで売られているもの

メキシコ人に、

「テピトってどんな場所?」

と聞くと、危険な場所だ、という前置きのあとに「マーケットだ」という答えが帰ってきます。

テピトでは、一体何が売られているのでしょうか?

テピトは国内最大のコピー品マーケット

テピト地区では、海賊版のCDやDVDから、服、靴、カバンなど、あらゆるコピー品が売られています。その規模は巨大で、なんとメキシコで消費される約70%もの違法コピー品がここで売買されているのだそうです。

また、PROFECO(メキシコの消費者センター)の調べによると、ここで販売されている酒類を数十本選んで調査した結果、100%の確立で中身が違うものだったという結果も出ています。それほどまでに、ここで販売されるものは「何もかもがコピー」なのです。

そして、コピー製品のほとんどは、中国製です。

コピー品の売買は、「他の重犯罪と比べると、そこまで酷い犯罪ではない」と思われがちですが、実は、これこそがテピトが危険地区になる原因だったのです。

その理由を、これから話します。

ブラックマーケット

ブラックマーケットとは、違法物(主に武器やドラッグ類)が売り買いされている市場のこと。

テピトは、メキシコの中でも最も多くの違法物取引が行われている「メキシコ最大のブラックマーケット」だと言われています。

なかでも、テピトで主に販売されているのはドラッグ類です。

ドラッグの問題

1970年代から、メキシコでは大型貨物トラックによる運搬が活発になり、「中国産のコピー品の販売のために」、各港やアメリカ国境からテピトに向けてたくさんのコピー製品が送られてくるようになりました。

そして港からテピトまでコピー品を送り届けたあと、港まで空で帰るトラックに目を付けた密売人は、テピトの商人たちに交渉を持ちかけます。

「トラックを空で返す代わりに、周辺で精製されたドラッグを詰め込んで送ってくれないか?」と。

巨額の運送費を見せられて、話に乗せられたトラック運転手や商人がどんどん増え、テピトはドラッグ運搬のハブになりました。そしてこれが、メキシコのドラッグが有名になったきっかけなんです。

たかがコピー品、されどコピー品。

これは、「小さな犯罪」が、結局「大きな犯罪」を生み出していく典型的な例だと思います。

ドラッグ売買が始まったせいで、もともと治安のよくなったこのエリアの治安は最悪になりました。

また、テピト内のマーケットでは現在もドラッグや武器は売買されており、この地域の若者のドラッグ中毒率の高さは大きな問題になっています。それほどまでに、ここテピトではドラッグが簡単に手に入ってしまう環境なのです。

この問題はあまりに根深く、警察もテピト地域の犯罪はコントロールしきれないほどです。

ジャックされたバスの終点地

また、「運送バスジャック」は、メキシコで頻繁に起こる犯罪のひとつです。ジャックされたバスの多くは、ここテピトに連れてこられ、荷台の荷物や商品を根こそぎ盗まれてしまうのだそうです。(その荷物を裏で売って儲けるため。)

しかも恐ろしいのが、テピトではこのような事件が週に何十件も起きているという点です。

もちろん、その中には、「ドラッグが詰め込まれたトラック」もたくさんあるはずです。

ドラッグの運送トラックだった場合、一回のトラックジャックで数億円分のドラッグが手に入るので、生活に困った人達が、死にもの狂いで狙いに来るのです。ただし、このようなドラッグの売買は現在はマフィアなども相当絡んでいるので、明らかにとても危険な行為。

そのような、「マフィアを愚弄した」とマフィア側に思わせてしまうような犯罪をした場合、その人はその後、裏でどうなってしまうかわかりません。

テピトの様子が分かる動画

テピトの様子が分かる動画を二つ紹介します。

ただし、ここで映されているのは「テピトの表の顔」です。テピトの裏側はさすがにネットに載せられないと思うので。。ただ、テピトのマーケットの様子は良く分かると思います。

『Tepito one of Mexico’s most dangerous black markets』

(訳:「メキシコで最も危険なブラックマーケットのひとつ、テピト」)

特に印象的なのは、銃の売買のシーン。4:42の部分からは、テピトでどのように銃などを手に入れるのかを実際に商人に聞いて、商人が説明しています。

主人公の男性が、「もし私がテピトで銃を買いたかったら、どうすればいいんですか?」と聞くと、商人がおもむろにスマホを取りだします。そして、写真のフォルダから様々な銃の写真を取りだし、「どれが欲しいんだい?」と。

最後の方では、20年間テピトのころし屋コミュニティで働く男性が登場します。指を切られ失ったその男性は、現在もテピトの犯罪グループで働いています。「自分が悪いことをしているという自覚があるか?」と聞かれ、彼は「悪いことかもしれない。しかし生きるためには仕方ない。」と答えました。

最後に、テピトが人々の「表に出せない需要を満たす場」であること、そして、「需要がある限り、テピトのブラックマーケットは存在し続ける」と語られました。

『Tepito, Barrio Bravo from Adriana Zehbrauskas』

以上、メキシコで最も危険なエリア、「テピト地区」についてでした。

メキシコ全土がテピトなわけではない

テピトについて知ると、「やっぱりメキシコは危険でヤバい国だ。」と、「メキシコ=テピト」のようなイメージを持ってしまうかもしれませんが、それは間違いです。テピトはかなり特殊なエリアで、ここで書いたのは、本当に「テピトエリアの中でも、ほんの一部」の話。

メキシコの大部分(特に南部)はとても平和で、観光客が普通に旅行している限り、巨大都市のメキシコシティではスリなどの軽犯罪に合うことはあっても(ヨーロッパでも起きるように)、テピトで起こるような重犯罪にはまず巻き込まれません。(アメリカと国境を接する北部は確かにちょっとヤバいですが…。)

その証拠に、こちらの記事(→【メキシコの治安】危険?衝撃写真のカラクリと、本当に心配するべきこと)で紹介したデータでもわかるとおり、メキシコにおける殺人率は中南米の中では最も低く、最も安全。数字はアメリカと変わらないです。また、リゾート地「カンクン」に至っては、データで見るとフランスやカナダに行くのとかわらない安全度なんです。

ただし、「闇が深い部分」が存在するのも事実。

とくに、メキシコでドラッグやマフィアと深く関わっているもの(国境沿いの貿易、政治関係、ドラッグビジネスなど)に絡むと、とても危険です。ただ逆に言えば、そのようなものと関わらなければ、比較的安全に過ごせる国なのです。

まとめ&注意

テピトは、現地のメキシコ人ですら絶対に行かないエリアです。興味本位や遊び半分では行かないように。(テピトで起こる犯罪は「観光客の被害者も多い」という点は忘れないでください。)

さらに、観光スポットがたくさんある歴史地区にも近いので、ブラブラしていたらたまたまテピトに入っていた、ということにならないように、十分気を付けてください。

中心広場のソカロから、テピト地区まではたったの1km(徒歩15分)です。

歴史地区自体は、見張りの警察官もたくさんいて、基本的に安全です。ただ、歴史地区内を散歩するときは、北部はあまりうろつかず、なるべく人の多い道を選んで歩くようにしましょう!