メキシコの先住民・ウイチョル族が作るアートには、幻覚サボテン「ペヨーテ」を食べて見た世界が描かれます。
彼らが生み出す、カラフルな世界を覗いてみましょう。
もくじ
ウイチョル族とは?
ウイチョル族は、メキシコの中央高原エリアに住んでいるメキシコ先住民です。
「Sierra Madre Occidental(直訳:西部母山)」という、メキシコ西部と米国南西部を覆う山にある村々に住んでいます。
ウイチョル族は、自分たちのことを「Wixáritari(ウィラリタリ)」(ウイチョルの言葉で「人々」という意味)と呼び、伝統的な暮らしと文化を守って暮らしている、数少ない先住民族のひとつです。
ウイチョル族の作る毛糸のアート「Niérika」
ウイチョル族の作る毛糸のアートは、ウイチョル族の言葉で「Niérika(ニエリカ)」と呼ばれています。
この名前は、あまり一般的に知られているものではなく、メキシコのお店などでも「ウイチョル・アート」「ヤーン・アート(羊毛アート)」として売られています。
伝統儀式で見るビジョン
ニエリカは、ウイチョル族が古代から続く伝統の儀式を行った際に得た「ビジョン」を表したものです。
彼らは、伝統儀式を行う際、彼らにとっての神様である「ペヨーテ」という幻覚サボテンを食べます。
ビジョンとは、その幻覚サボテンによって見える幻覚や、トリップした際に彼らが見た世界のことです。
毛糸アートのデザイン
羊毛アートの中には、様々な動物、植物、幾何学模様、モチーフが出てきます。
それぞれのモチーフには意味があり、ひとつひとつが彼らの世界観を表しています。
たとえば、ここに描かれている鹿は、「神の遣い」という意味です。
右には、擬人化した鹿が蛇を掲げている様子も描かれていますね。
蛇は、水と雨と海の神だと信じられています。雨の神である蛇を掲げたことにより、左上には雨が描かれています。
これは、彼らにとっての神、「ペヨーテ」(幻覚サボテン)です。
ペヨーテは、実物を上から見るとこのような見た目で、非常によく描かれるモチーフです。
このように、ウイチョル族のアートに描かれるモチーフの意味を知ると、彼らの世界をより深く知ることができます。
毛糸アートの作り方
羊毛アートは、木板などに色付けされた羊毛を貼り付けて作られます。
手順は、以下の通り。
- 作品の土台になる木の板を、紙ヤスリで磨く(⇒蜜蝋が付きやすくするため)
- 木の板に、接着剤替わりの「campeche(カンペチェ)」と呼ばれる蜜蝋を塗る
- 蜜蝋に、直接色付きの毛糸をくっつけて描いていく。(下書きをすることもあるが、ほとんどの場合その時に頭に浮かんできたアイデアやデザインを表現する。)
作品の工程はシンプルなのですが、下書きなしで頭に浮かぶデザインをバランスよく描いていくのは至難の業です。美しい作品を作るには、多くの経験が必要です。
また、普通のニエリカは、10色ほどの毛糸でデザインされるのですが、多いものは50色以上の毛糸を使い、さらにカラフルに仕上げられます。
ニエリカの使い道
ニエリカは、基本的に木の板で作られます。
なので、「装飾品」として作られることが多く、実用的な物はあまりありません。
ミニサイズの正方形の木の板のニエリカの場合は、コースターとして使うことができます。
ウイチョル族のアートが見つかる場所
ウイチョル族の住む地域で見つけることができます。
ウイチョル族は、かつては山奥で暮らしていましたが、今は都会に住む人も多く、様々な地域にいます。
特に、ナヤリット州やハリスコ州、ドゥランゴ、サカテカスなどウイチョル族が多い地域では、より手軽な値段で手に入ります。
ドゥランゴ州の道端で売られているウイチョルアート
メキシコシティの中では、シウダデラ市場で見つけることができます。
⇒メキシコらしいお土産探しならシウダデラ市場!魅力と行き方も紹介
ウイチョル族によるほかのアート
こちらも、とてもカラフルな民族アートです。