さて、前回は、やっとのことでフレンドリーなウイチョル族、ホルヘ(仮)を見つけ、聖地レアル・デ・カトルセで伝統儀式を見せてもらえるということで、はりきってテントやら荷物に詰め込み出発しました。
前回を読んでいない人は、こちらからどうぞ。
⇒メキシコ民族調査① フレンドリーなウイチョル族を探して
ウイチョル族の聖地「レアル・デ・カトルセ」へ
「レアル・デ・カトルセ」へは、バスで向かいます。
一度違う街でバスを乗り変え、「ついたよ」と言って降ろされたところは、なんにもない山の上の駐車場。
ここから、目の前にある山のトンネルを抜けたら、レアル・デ・カトルセ村に到着です。
実はわたしは、この村には数年前に一度来たことがありました。
前回は、乗馬とかしてのんびり過ごしていました。
村については、霧が濃い寒い村だった、ということだけ覚えていました。
当時はウイチョル族のこともよく知らず、スペイン語も全く話せないので、あまり積極的に調査をしませんでした。
今回は、ある程度は話せるようになったし、リベンジ気分で、村へ続くトンネルを抜けます。
トンネルの先にある霧の村
レアルデカトルセにたどり着くと、そこは霧が濃く立ち込めていて、真っ白でした。
トンネルの反対側は、雲一つない晴天だったのに…
来るたびに、この村は不思議な場所だなあと感じます。
メキシコには、観光政府が魅力的な自治体に定める「プエブロ・マヒコ(魔法の村)」という場所が、現時点で国内111か所あり、レアル・デ・カトルセも、その魔法の村の称号を得ています。
わたしは、今までいろんな「プエブロ・マヒコ」に行ってきましたが、
ここほど「魔法の村」という称号がピッタリだとおもう場所はほかにありません。
↑ 霧があまりない日に撮影したレアル・デ・カトルセ村です。
トラック待ち
儀式をするのは、レアル・デ・カトルセ村からさらに先の崖を下って行ったところに広がる砂漠です。
その砂漠へは、一日に一本だけ乗り合いトラックが出ています。
軽トラの後ろに乗るような感じです。
レアル・デ・カトルセに住む子供たちが学校に行くために乗っていくトラックなので、朝9時ごろに一本のみ。
わたしたちは、7時ごろに村に到着したので、そのトラックを待っている間近くのコーヒー店で休みました。
この時点で、わたしはとても不安になっていました。
なぜなら、ものすごく寒いから。
「メキシコは熱い」というイメージが強くありますが、それは低地で、中央高地(首都メキシコシティなど)は標高が2000m以上あるので結構寒く、夜は冷え込みます。
ここレアル・デ・カトルセの標高は、2,728m。メキシコシティよりもさらに標高は高く、しかもこの日は霧が立ち込める悪天候。
ガタガタ震えながら、温度計をチェックすると、1℃でした。寒っ。
とりあえず、コーヒーを手で包んで耐え忍びます。
ウルトラライトダウンでは寒さを防げず、寝袋を取り出し、そこに入ってなんとか暖をとります。
これから行く砂漠はさらに寒そうだし、一晩過ごしたら凍死するんじゃないか?と心配になりました。
カフェのおじさんは、わたしが寝袋に入ったのを見て、「もしかしてずっとここにいるつもりでは…」と心配そうに見ていました。
そんなこんなでガタガタ待っていたのですが、
ホルヘは、超薄着なのに、余裕で居眠りしていました。
しかし、まさかの事態。
なんと、トラックに乗り遅れてしまいました。
ガタガタ震えたり、居眠りしたりしている間に、いつのまにか行ってしまっていたようです。
トラックは一日一本だけだし、どうしよう…と思っていたところ、
「歩いていくしかねえな。」
とホルヘが言います。
なんだ歩けるんならよかった(むしろ最初からそうすればよかった)、ということで、でこぼこ山道を下って行きます。
ウイチョル族の鍛えられた足腰
一応ホルヘにどれくらいで着くのかを聞くと、「たぶん30分くらい」とのこと。
まあ30分なら歩けるな、ということで、歩いていたのですが、
結果から言うと、全然歩ける距離ではありませんでした。
30分くらい歩いたところで、運よくヒッチハイクに成功したのですが、なんとそこから砂漠まで、車でも一時間以上かかりました。
あとからマップでチェックしてみたところ、直線距離で10km以上ありました。
ぐねぐね山道なので、実際はもっとあります。歩いたら、5時間以上かかるところでした。
今までの経験から、メキシコ人は日本人よりは時間にルーズで不正確なところはあるなあ、とは思っていたのですが、ホルヘの場合、その不正確さが群を抜き、むしろ違う時間基準で生きているんではないかと思うくらいでした。
だって、実際は5時間かかる道のりなのに「30分」て。10倍の誤差て。
それを言うと、ホルヘは「ヘヘ。違ったかあ。」と笑っていました。
もしかしたら、ホルヘは、毎年ウイチョルの伝統の「巡礼」で数週間歩いているから、彼の鍛えられた足腰の前では、5時間なんて30分に等しいほどにチョロかったのかもしれない、と一瞬思いましたが、
「いやあ、車が見つかって本当によかった。歩かなくてすんだ。」
と嬉しそうにしていたので、たぶん普通にホルヘの計算ミスでした。
思ったより寒かったり、トラックを乗り過ごしたり、危なく5時間歩くところだったり、いろいろありますが、
ついにウイチョル族にとっての聖地である砂漠の手前に到着です!
夜ご飯用に、小さな村の売店でクッキーを買い、今度は砂漠へ行くジープを待ちます。
「たぶん20分でくる」
と言われました。
4,5時間かかりました。
この時点で、なんやかんやすでに夕方になっていました。
つづく