この記事は、ホセ・シリーズの前回の記事の続きです。
前回の記事:メキシコのアミーゴ④ 絶滅危惧種を違法でペットにする男、ホセ
ホセファミリーが毎年開催しているクリスマスパーティーにお呼ばれした私は、ワクワクしながらその日を待ちました。
パーティー用の服
ふと、「パーティーにはどんな服を着ていけばいいんだろう?」思い、ホセに聞いてみました。
「今、旅用の服しかないんだけど…」
「あー、服は適当で大丈夫だから気にしなくていいよ!身内の超絶カジュアル・パーティーだし!」
ええ…めっちゃ不安…。
ホセの「大丈夫」は、ほとんど大丈夫ではないので。
当日、とりあえず持っている服の中で一番マシに見えるロングスカートをはいて、ホセにこれでいい?と聞くと、
「う~ん、ダメだな!!」とバッサリ。
「他になにがある?見せてみな!」
といわれ、私のバックパックに入っている服たちを全部出して見せました。
「…う~ん、おれは服はよくわからないから、とりあえずママに聞こう!」
ホセママの部屋に行くと、ママはホセ妹のヘアーメイク中のようです。
私も部屋にお邪魔すると、二人ともカジュアルながらもちゃんとおしゃれしていました。
すると、追いうちをかけるように、
「あ~、そのスカートは、ダメね。」
と、ホセママからもダメ出しをくらいました。
このゆるめのスカートは、ホセファミリーにとっては「ナシ」らしいです。
後からわかったのですが、メキシコシティに住む女性は、ほとんどの場合パンツスタイルで、スカートをはくことは滅多にないです。
特にこういうゆるい感じのマキシ風スカートは、みな言葉には出さないものの「先住民っぽい服装」ということで避けているようです。
「クリスマスパーティー=スペインから来た文化」なので、スペイン文化のイベントに先住民の服装をしていくのは、なんか違うという感覚があるのでしょう。特に、ホセファミリーは完全にスペイン系の白人なので、余計そうなのかもしれません。
「差別」というよりも、「どうしても違和観がある状況」というか…。たぶん、日本人の感覚でいうと、「クラブに外国の民族衣装で行く」くらいの感覚なのでしょう。
「ほかに服はないの?」ホセママに聞かれ、
「う~ん、こんなかんじ。」と、バックパックの中のパーカー、Tシャツやらを見せると、
「Oh. オッケー!」と一言。
急遽、ママが服を貸してくれることになりました。
結局着たのは黒いスキニーと、首元がダボついた茶色いおしゃれな服でした。
ちょっと自分の服たちがかわいそうになりました。
いざパーティー会場へ!
ついに、パーティー会場(じいちゃんち)へ向かいます!
車に乗り込みながら、ホセに、パーティーが何時から始まるのか聞くと、
「たしか7時!」
…現在、8時。
でも、パーティーに1、2時間遅れで行くのは、メキシコでは普通なようです。
会場についたのは、8時半。ホセのおじいちゃんの家は、ホセの家からも少し離れたところにあるのですが、ホセの家よりもさらに巨大な豪邸でした。
ホセのおじいちゃんの家
ホセのおじいちゃんの家の扉を開けると、まず巨大なクリスマスツリーが目に入りました。
螺旋階段でできた吹き抜けを利用して立っていて、ディズニーランドのレストランとかに飾ってありそうな規模です。
家に入ると、ホセの親戚の人たちがとても暖かく迎え入れてくれました。
わたしがスペイン語がわからないので、英語で話してくれます。みんなペラペラです。
「挨拶&ほっぺにチュッとする⇒I’m from Japan」の流れを数十回繰りかえし、やっと一番奥の部屋にいるホセのおじいちゃんとおばあちゃんのところに辿りつきました。
おじいちゃんはダンディーな紳士、おばあちゃんはマダムという感じで、とてもおしゃれで40代後半に見えるほど、若々しい夫婦でした。それに、二人も英語がペラペラでした。
わたしがわかるように気を使ってか、ホセとも英語で話していました。
(この家族には、英語が話せない人がいないようです!)
でも、とりあえず、全然、ホセの言ってた「身内の超絶カジュアル・パーティー」じゃない…!
参加者数は、ざっと見て50人以上。後から聞いたら、なんと60人以上来ていたそうです!
豪華な家の謎
そして、なんかもうわけわからないくらい大量に部屋がありました。
トイレも、10か所くらいあります。
しかしこの時、わたしは気付きました。
メキシコの豪邸のトイレは、こういうパーティーでこそ、その実力を発揮するということを…!
このホームパーティーは、「参加者総勢60人以上」という半端ない規模だったのにもかかわらず、「トイレに並ぶ・待つ」ということは一切ありませんでした。
そこのトイレがダメならあそこ、あそこがだめなら階段裏、キッチン横、二階、と、ありあまる選択肢。
メキシコ豪邸の、異常なまでのトイレの数の謎が解けた瞬間でした。
クリスマスパーティー
クリスマスホームパーティーでは、まずディナーをみんなで食べます。
10人用の円形テーブルが部屋に6,7個用意され、全員が席につくと、おじいちゃんによる「ウェルカム・スピーチ」が始まりました。
おじいちゃんは面白い人で、スピーチ中も冗談を飛ばしてみんなを盛り上げていました。
その間、専属のカメラマンらしき人が、みんなの写真を撮りまくっていました。
私は、スペイン語なのでおじいちゃんが何を言っているのかは全くわからなかったのですが、ひとりだけ無表情で写真に写るわけにはいかない!と思い、とりあえずみんなに合わせて笑いました。
次に、おばあちゃんのスピーチ。
なんか、結婚式みたいだなあ、と思いながら会は進行していき…ついに、サルー(乾杯)!
ディナーはバイキング方式で、たくさんの種類のごはんが用意されていました。
この時は自分が一体何を食べているのかはわからなかったのですが、当時の写真を見なおしてみると、「ポソレ」や「モーレ」、「サボテン卵あえ」など、メキシコを代表する伝統的なご飯がたくさん出ていました。
ホセに、「これは絶対に食べないとだめだ!メキシコの伝統料理なんだよ。」と、勧められるまま、いろんな物を食べました。
どれもとても美味しいのですが、ホセの皿を見ると、いつも豆しか乗っていません。
「ホセ、豆ばっかりじゃん」
「いや~、俺、メキシコの伝統料理は嫌いだから。それに、豆はすごく健康にいいんだ。」
「えー、そ、そうなんだ…。」
せっかくこんなに沢山のごちそうがあるのに、すごくもったいないと思いましたが、その後もホセは、食べ物を取りに行くたびに豆ばっかり大盛りよそってきました。
↑まめ大盛り
後から、別のテーブルだったおじいちゃんに「ディナーはどうだった?」と私とホセが聞かれた時、
ホセは、「美味しかったよ!特に、あのスペシャルな豆が!」と言っておじいちゃんを喜ばせていましたが、豆しか食べとらんだろ!と思いました。
ホセの謎のお父さんとおじさん
さて、今までホセのお父さんとおじさんの正体が謎だったので、今日会える、ということで楽しみにしていました。
しかし、ディナー後、外に電話をしに行って帰ってきたホセは、
「今日は、父さんとおじさんは来られなさそうだ。」と、とても残念そうに言いました。
「そうなの?残念…」
「うん、仕事が忙し過ぎて、間に合わないらしい。」
「あれ、そういえば2人は一緒の仕事場で働いてるの?」
「よくわからないけど、そういうこともあるらしい。」
ええ…ナゾ。
とりあえず、どちらとも会えないというのは残念すぎます。
「メキシコ人は普通、ほとんどが家族>>>仕事で、家族優先なんだ。父さんとおじさんもそうさ。」
「じゃあ、よっぽど忙しいんだね。」
「うん。あ、二人が来れないことは、じいちゃんたちの前で話さないでくれないか、ものすごく悲しがるから。」と念を押されました。
この食事や飾り付けの豪華さを見ればわかりますが、おじいちゃんたちにとってもこれは相当大切なパーティーで、近い身内(息子たち)が来られなくないというのは一大事なのだそうです。
「どうにかして、じいちゃんたちには、二人がいないことに気付かせずに過ごしてもらおう。」と、ホセ。
ホセにも、こんなおじいちゃん想いの優しい一面があったのか…!と驚くと同時に、
「ホセの優しさが、初めてまともに機能している!」と、ちょっと感動しました。
ディナー後もパーティーは続きます。
つづく。⇒メキシコのアミーゴ⑥ ホセファミリーとクリスマスパーティー後編