「金」は、古くからメキシコ人に愛されている素材です。
現在もメキシコでは、古代から続く金箔技術を駆使した美しい工芸品が作られ続けています。
メキシコの金箔の歴史
スペインが到着する以前の古代から、輝く金色は「特別な色」として人々に愛されてきました。
古代の儀式に使われたお供え物は、金箔を全面に施した輝くひょうたんに入れて捧げられていました。
元々金が豊富に取れたメキシコには、何百年も前から金箔の技術があったのです。
メキシコの金箔を使った民芸品
現在、金箔を使用するアルテサニア(民芸品)は数が少なくなっています。
材料である金箔を手に入れることが、経済的に難しいからです。
金色のラッカーを使って、金箔代わりにすることもできるようにもなりました。
しかし、一部の伝統を守る職人は今も金箔アートを作り続けています。
金色に輝く工芸品
古代から続くものづくり
メキシコの民芸品の中で金箔が使われるのは、主に古代と同じ「ひょうたん」や、木製の箱、トレーです。
ひょうたんは、カーブが多いので金箔を貼るのには高度な技術を持っていないとできません。
基本的に、ナチュラルな素材だけを使った古代から続く技法で作られ、金箔を貼りつけるために使う、漆や、絵付けの技術も必要になります。
メキシコ流・金箔アート作りの流れ
ここでは、金箔と絵付けの巨匠である「Francisco Coronel Navarro」氏の作業行程を紹介します。
- 金箔を貼る材料(木材・ひょうたん)を紙やすりで磨きます
- 表面に、接着剤としてのチアシードの油でできた漆を塗ります。
- 金箔をていねいに乗せていきます。
- 石で金箔をこすり、表面にむらなく金箔を貼り付けます。
- 金箔を全面に施し、完全に乾いたら、その上から絵付けをします。
- 下描きをし、一色づつ色を入れていきます。一色いれたら、完全に乾くまで待ちます。
- 一色づつ色を入れる工程を繰り返し、鮮やかな絵を完成させます。
金箔を貼る作業の難しさ
金箔貼りはとてもデリケートな作業なので、集中して取り組むために、静かな場所で行います。
近くを車が走るだけでも振動でずれてしまうので、音がしない、揺れのまったくない閉ざされた場所で作業をします。
また、湿気があると作業が難しくなるので、天気をチェックし、雨が降っているまたは湿度の高い日には、作業は控えます。
銀泊の場合も、同じような手順で作られます。
金は、古代からメキシコで愛されてきた材料でした。
現在も、数こそ少ないものの美しい伝統工芸品が作られ続けています。
このようにていねいな工程を経てできあがる金箔アートは、目を奪われる美しさです。