コラム

メキシコの仮面はおもしろい!⑦ 「本物」vs「お土産用」の仮面

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

民芸品において、「本物」vs「お土産用」の争いはよくあるテーマです。

では、メキシコの仮面の場合は、どんなことが言われているのでしょうか?

「みやげ物」としての仮面

最近は、仮面が「メキシコの典型的なお土産物」としても人気になり、使うことを目的としない、「飾るための仮面」が多く作られるようになりました。

ミニチュアの仮面や、巨大なオブジェのような仮面は、その典型例です。

そういった、土産品として作られる仮面は、「商用仮面」とも呼ばれています。

仮面コレクターが思うこと

コレクターの中には、本来の目的(踊り)のために作られ使われた、「本物の仮面」しか集めないという人もいます。

前に会ったことのある本物嗜好のコレクターに、なぜなのかを聞いたところ、「仮面は、祭りを通して初めてバプタイズ(洗礼)されるから」と言っていました。

つまり、「祭りで使われることによって一人前の仮面になれる」、という感じでしょうか。

その人にいわせれば、祭りに使われていない仮面というのは、本物の仮面になれておらず、大切な仕上げを忘れた中途半端な状態なんだそうです。

 

わたしは、お土産物として作られた商用仮面も買います。

あんまり、商業用なのかどうかを気にしたことがなかったのですが、そのコレクターの話を聞き、「そうなのかあ~」と思って以来、一応買うときには聞くようにしています。

でも正直、「これは一人前の仮面なんだ」、と意識してしまうと、なんだか仮面から得体の知れないパワーを感じる気がする(思いこみ)ので、知らなくていいかな、とも思います。

あと、単純に「持って帰りやすい」という面でも、小さいサイズのある商用仮面はやっぱり楽です。

商用仮面もおもしろい

商用仮面を作っているのは、踊りのための仮面を作る仮面職人が多いですが、

なかには、祭りに使われるほどの技術と名声はないけど、おもしろい仮面を作る若手職人もいます。

若手職人は、今の時代を反映させた斬新なアイデアの仮面を作るので、おもしろいです。

ニーズに答える仮面職人

ちょうど去年(2016年)、トランプ大統領が当選した時は、「トランプ大統領の仮面を作った」と言っていた人もいました。

すごく見てみたかったですが、売れてしまったのか、見ることができませんでした。

どんな人が買ったんだろう…と売れたことに驚きました。アメリカ人がジョークで買ったのでしょうか。

仮面は、今アメリカの一部の人たちの間でかなりブームになっているので、アメリカ人が面白がるものを作ろうとする職人も出てきています。

買い手のニーズを考えて仮面を作っているあたり、さすが商用仮面、と思いました。

個人的には、伝統的なデザインの仮面も好きですが、そうやって生まれる新しいタイプの仮面もチェックしていきたいなあと思います。

商用仮面のあり方について考える

商用仮面についてよく言われる問題点は、2点あります。

  1. 適当に作った粗悪品が出回る
  2. 伝統を守った仮面が作られない

1の粗悪品については、たしかに、商用仮面の中には明らかに手抜きな作品もありますが、そういう仮面にも実は需要があります。

その手抜き具合が、絶妙な「ユルさ」や魅力を生み出すこともあるからです。

そしてたいていの場合、値段も適正で、クオリティーの低いものは安く、凝って作られたものはそれなりの値段で売られています。

なので、「粗悪品が高い値段で出回る」ということは、今の時点ではほとんどありません。

そう考えると、幅広い予算のニーズに答えることができて良いのでは?と思います。

次に2の「伝統~」については、さっき書いたように、もう少し新しいものも評価されてもいいんじゃないか、と思います。

しかし、「伝統的な仮面の作り手がいなくなる」というのは、やはり問題です。

さっき若手の職人の話をしましたが、今の時代仮面一本では食べていくのが難しいので、職人の数はどんどん減っていて、若い人はほとんど職人になりたがりません。

職人になっても、お祭りなんて年に何度もあるわけではありません。

しかし、商用仮面の需要を延ばすことによって、職人さんも出稼ぎとかでなく仮面作りによって食べていけるんなら、「職人」という仕事を守るためにも、それが一番なんじゃないかな、と思います。

もちろん、商用ばかり作って、「踊り用」の仮面のクオリティーが下がってしまったら、それはとても悲しいですが…。

仮面が生き延びるためには

仮面に限らず、同じことが民芸品のどの分野においても問題になっています。

しかし、メキシコの民芸品文化自体、長い歴史の中で、スペイン人にデザインを変えられたり、また参考にしたりして、怒涛の変化を繰り返す中で生き延びてきました。

「伝統的」であることにこだわりすぎず、たとえば、今、世の中に求められている仮面がトランプの仮面ならば、それを作っていくのがメキシコの仮面文化を生き延びさせるひとつの方法なんじゃないかなあ、と思います。

もちろん、トランプに限らず、「ニーズに注目する」ということです。

そのうえで、伝統的な仮面を作る技術もしっかり残していってほしいな、と、一メキシコ雑貨コレクターとして願っています。

次の記事:メキシコの仮面はおもしろい!⑧「水木しげる」という仮面コレクター