わたしの大好きなメキシコの民芸品の一つに、「生命の木(ツリーオブライフ)」があります。
現地では、スペイン語で「Árbol de la vida(アルボル・デ・ラ・ビダ)」と呼ばれています。メキシコシティ近郊には、この生命の木を作る専門の職人たちがいて、日々制作に励んでいます。
もくじ
メキシコの民芸品「生命の木(Árbol de la vida)」とは?
「生命の樹」は、その名の通り「木」の形をした焼きもので、そこに木の実がなるように様々なミニチュア装飾が施されます。
メキシコシティ周辺地域(主に「Metepec(メテペック市)」)で生産されています。
サイズは、たった数センチのミニチュアサイズから、大人の背を越す数メートルになる巨大サイズまで、様々。
生命の樹については、画家の利根山光人がこんなふうに語ってます。↓
メキシコ州のメテペックでつくられる巨大な”生命の樹”には、スペイン・バロックの執念とインディオ文化がミックスしてひとつの幻覚の世界を生み出している。
引用:利根山光人『メヒコ・マヒコ』pp.52-53
なるほど、バロックの華麗&重厚な装飾と、インディオのデザイン感覚の融合が、この生命の樹なんだな…!と、とても腹落ちしました。
今でも、メキシコ各地に中世のスペインバロック全開の
メキシコはミニチュア大国!
実はメキシコは、日本に負けず劣らず手先の器用な人が多い「職人大国」で、ミニチュア・アートも盛んです。
そんなミニチュア・アート技術の極みであり、メキシコ職人魂を存分に感じられる民芸品のが、この「生命の木」なのです。
生命の木の歴史
最も伝統的なデザインのものは、キリスト教に基づいた世界観を表現するために作られたんだそうです。
例えば、木の形のベースの頂点に神(キリスト)が置かれ、「神は7日間で世界を作った」という話に基づいて太陽や月、そしてアダムとイブ、動物などが飾り付けられます。
しかし最近は、宗教とは関係のない様々なテーマで作られることが多くなりました。
↑骸骨のマリアッチ(メキシコの音楽隊)たち。メキシコらしさ爆発ですね!
↑メキシコのお祭りをテーマにした作品。ジャガーの仮面や、ダンサ・デ・ロス・ボラドーレスというダンスの踊り子たち…
その他いろんな地域のお祭りが詰め込まれてます。
というわけで、最近は「宗教」とは全く関係ないテーマで作られたものの方が多いです。
わたしが持っているコレクションの中には、「メキシコの性風俗」というテーマで作られたものもあります。裸の女性がいっぱいで、完全に宗教観はゼロです。笑(メキシコの民芸では「風俗」も大人気のテーマで、いろんな民芸品で作られています。)
「生命の木」は何に使うの?
生命の木は、昔は「繁栄と豊かさの象徴」として、新婚夫婦に送られるプレゼントだったらしいのですが、現在は生命の木を結婚式におくる習慣はほぼなくなりました。
今は、インテリアや土産物として生産されています。
「生命の木」は海外からの人気も高く、メテペック市の職人のもとには海外の様々な国から注文がくるそうです。
写真一覧
メテペックで作られた生命の樹
↑「木」の中に、さらに小さい「木」が…!控えめに着色し、土の色を活かしたものも最近は人気なんだそうです。
↑非常に細かい、ミニチュアサイズのもの。これはわたしが職人さんからプレゼントでもらったのですが、iPhone7よりも小さい木の中に、たくさんのお花や小鳥、人間(神、木の葉で股間を隠したアダムとイブなど)が詰め込まれています。
↑こちらは、展覧会の様子。
首都のメキシコシティにある民芸品博物館 (Museo de Arte Popular)では、常設で素晴らしい生命の木の数々を見ることができます。
わたしも毎回行くたびに、何度も見ているはずなのについ感動して見入ってしまいます…✨
メテペック市以外の産地
メテペック市以外でも、生命の木を作っている職人さんはいます。(数は多くないですが)
↑この作品は、プエブラ州の「イスカル・デ・マタモロス村」で作られたものです。
メテペック市の生命の樹とデザインが異なり、この作品は木の枝の部分にも細かな色付け装飾がされているのがわかると思います。
プエブラ州は「タラベラ焼き」で有名で、陶器の絵付けの盛んなエリアなので、その特徴が生命の木のデザインにも現れているのかもしれません!
↑タラベラ焼きの食器。
生命の木の産地
エリア
村名
主に、以下の三か所で生産されている。
- Metepec(メテペック市)
- Mexico State(メキシコ州-メキシコシティ周辺エリア)
- Izucar de Matamoros and Acatlan, Puebla(プエブラ州のイスカル・デ・マタモロス村、アカトラン村)
生命の樹の産地として最も有名なのは、メテペック市。ほとんどの職人さんがここで生産活動をしています。
日本で買える場所
メキシコ雑貨の専門店などで、たまに見かけることがあります。
いかにも壊れやすそうな陶器なので、輸入が難しくあまり見かけませんが…
神奈川県平塚にあるエスニックグッズの店「雑貨&カフェ マライカ BAZAAR」の店前には、超巨大なメテペック産の生命の木が飾られていて、ビックリしました!!
雑貨&カフェ マライカ BAZAAR
↑たまたまこの近くを通って見つけたので、ビックリ。メキシコからコンテナで運んだんだそうです。
しかも、メテペックで仲良くしてもらってる職人さんの作品で、さらに驚きました!日本で見られる最大規模の生命の樹かも?