以前、大学でお世話になった教授のツテで、メキシコの世界遺産であるテオティワカン遺跡で遺跡発掘のお手伝いをしていたことをちらっと話しました。
→テオティワカン遺跡にて。発掘のロマンは、地道な作業の先にある…!
遺跡発掘の現場では、地元の人たちと一緒に働いて、彼らの「日常生活」を一緒に過ごすことができて、とてもいい経験になりました。
このシリーズでは、そんな中でも思い出に残っているエピソードを紹介します。
休憩時間の過ごし方
遺跡発掘の現場では、お昼に休憩時間が1時間くらいあります。
その1時間の間に、みんな持ってきたお弁当を食べたり、仕事仲間とおしゃべりをしたり、好きなように過ごします。
この発掘作業には弟(リョー)と一緒に参加していたのですが、わたしは女性が多い発掘したものを仕分けする作業していて、リョーは男性による力仕事がメインの発掘現場で働いていました。
リョーから聞いた、発掘現場の男性陣の休憩時間の過ごし方はかなり癖つよです。
ランチは瞬殺
わたしのところでは、みんなお弁当を食べていましたが、発掘現場ではお昼ご飯が提供されて、みんな同じものを食べます。
大量のトルティーヤとマッシュドポテト、あとコーラの巨大ペットボトルはだいたい固定で、あとはおかずが出るので、それをタコスにして食べます。
ある日のおかずはマカロニだったので、トルティーヤの上にポテトを盛り付けてマカロニを巻いて食べるという炭水化物オンパレードなランチでした。
誰かの誕生日には鳥の丸焼きが出るので、みんな大喜び!!!(肉のあるランチは超貴重です)
「誕生日おめでとう、肉ありがとう!」
「肉ありがとう!!」
「ありがとな!肉!」
と口々に言われます。
野外ビュッフェスタイルなので、一旦みんなにフェアに取り分けてから、おかわり以降は和気あいあいと、静かに、しかし壮絶な取り合いが繰り広げられます。
そんなこんなで取り合いの末、5〜10分くらいで大体すべての食べ物がなくなるので、その後の50分間は暇になります。
男たちは走ります!!!遺跡へ!!!
遺跡を駆けのぼれ!!
テオティワカン遺跡の発掘現場と観光客が来るエリアはつながっているので、関係者なら簡単に行き来することができます。
一応ちゃんとした道も作ってあるのですが、そこは無視。
わざわざ、草むらのくっつき虫がズボンに大量につくような険しい近道を駆け抜けていく彼らの目指す先は…
太陽のピラミッド!!!
とりあえず、彼らは太陽のピラミッドの頂上まで一気に駆け登ります。
太陽のピラミッドはテオティワカン遺跡のメインのピラミッドなのですが、段差が大きくて登りにくいのと、標高が高い(約2,000m)から息がめちゃくちゃ切れるので、登るのはほんとに大変。
わたしも、テオティワカン遺跡には数え切れないほど訪れていますが、太陽のピラミッドに登頂したのは一回だけ。この先もたぶん登らないです。笑
そんな太陽のピラミッドを、ロープにつかまりながらゆっくりゆっくり上る観光客を尻目にものすごいスピードでうおおおおお!と駆け上って行きます。
なかには、決められた階段スペースを無視して脇から登っている強者も。(そういうならず者を昼ごろに見かけたら、おそらく地元の発掘スタッフです)
登頂したら、無言でハイタッチ。
その後は景色を楽しむわけでもなく、登った時をさらに上回るような猛スピードで駆け降りて行きます。もちろんロープも使いません。(怖いわ)
リョーは「最初は登るのが辛すぎて、付いていくだけで死ぬかと思ったけど、毎日やっているうちに大丈夫になってきた。」そうです笑
ボーナスタイム!!!
ピラミッドから駆け降りた後は、フウッ!と息をつきながら適当な石に座り込み、ピラミッドを見上げること…数十分。
パッと見は「ただただピラミッドを見上げてその壮大さに感嘆している人たち」なのですが、本当はなにをしてるかと言うと、
ピラミッドを登る女性観光客の尻をずっと見ています。
ショートパンツを履いている人や薄着の人はとくにターゲットになります。
「めっちゃいい尻の人おるわ」
「マジで?!どこどこ?!あ、ほんとだ!」
一同、ショートパンツを履いた美脚美尻の主がピラミッドを登っていくのをじっと見守る。ーーー登頂後、その人が降りてくる。
「うわあ!」
「おい!どうした!!」
「おい見ろ!さっきの美人さん!」
「あ…お、男だ、アイツ!!!」
…みたいな騒動もありつつ。
ちなみに太陽のピラミッドを登る女性観光客が少ない時は、月のピラミッドまで移動したりすることもあります。
休憩時間終了のギリギリまでそこでダラダラと、しかし瞬きも惜しむ勢いで過ごし、3分前になったら猛ダッシュで建築現場に戻って行きます。
…その間リョーはというと、息を整えるので精一杯。
強靭な肉体なしには、みんなと一緒に尻を楽しむこともできない…てこと。
シャイなやつら
彼らは、女性観光客に話しかけたりナンパする事は絶対にないです。
シャイなので。
でも尻はめっちゃ見てます。
無害で善良なムッツリたちです。
あと、ピラミッドに登ったはいいものの、怖くて下りられなくなってめちゃくちゃ困っている女性を見かけたら、そっと手を差し伸べるなど真摯な一面もあります。
ピラミッドの1番下からとんでもないスピードで颯爽と駆け上ってきて、すっと助けてくれる彼らは、かっこいいと思います。
シャイなので会話を盛り上げるなどできないし、連絡先を交換するなどもできませんが。
でもその後、半日はうれしそうにニコニコしてます。
あと、ピラミッドを意味なく猛スピードで登るのも
「俺らはすごいぜ!見てくれこの体力と勇敢さ!」
という、静かなるアピールなんだそうです。笑
そして、毎回ランチ後に息を切らしながら帰ってくる彼らは、ズボンに大量のひっつき虫をくっつかせたままホクホクの笑顔でまた発掘作業に戻っていきます。
尻を見守り、今日も働く
発掘現場は、地味で地道な作業の繰り返し。
砂とホコリにまみれながら、体力勝負の大変な仕事です。
しかし彼らの日常の中のささやかな楽しみが、ピラミッドを登っていく尻を見守ることなのです。
…そんなこんなで、発掘現場の男たちは大半が尻派。
これからも彼らは、テオティワカン遺跡のこれからと尻を見守り続けるでしょう。
これから、テオティワカン遺跡にお昼ごろ行く女性は、ちゃんと長ズボンを履いてピラミッドを登りましょう。笑