メキシコには、「絵付け」を専門にしている職人がたくさんいます。
彼らはつまり、「色の専門家」でもあります。
今回は、色が溢れる魔法のような国メキシコの”カラフルさの秘密”を探るため、職人へのインタビューを通して、「メキシコらしい色とは何か」について考えました。
もくじ
メキシコの絵付け&色使いは面白い
メキシコの絵付けは独特で、カラフル&ポップな印象の色の組み合わせが特徴的です。
日本人ではまず思いつかないような色の組み合わせで、一目で「コレはメキシコのものだ!」とわかるような、とてもユニークな色使いが多いです。
オアハカ州の有名な木彫りの動物「アレブリヘ」もそうですし、ほかの州でも、木彫りだけでなく陶器などにも絵付けが施されます。
絵付け職人さんは、毛をむしって極限まで細くした筆を手に、まるで「超絶技巧」に取り組むかのごとく、一筆一筆丁寧に模様を描き足し、全力で集中して描き上げていきます。
また、職人によっても「クセ」や「特徴」があり、慣れてくると、色の組み合わせや模様から、どの職人かわかるようになります。
絵付けは、一見同じように見える色や模様でも、一人一人表現の仕方が異なる、とても奥深い技術なのです。
メキシコの職人の色彩感覚
今まで多くの職人に会う中で、「どうしてこんな色の組み合わせを思いつくんだろう??」と、職人たちの色彩感覚をとても不思議に思ってきました。
全く違う地域の職人に会ったときも、職人によって色の組み合わせの特徴やクセはあるのですが、どこも「メキシコらしい色彩」に溢れていました。
「”メキシコらしい色”って一体なんだろう?」「メキシコの色の組み合わせについて知りたい!」と思い、教えてもらおうとしましたが、職人もうまく説明できないようでした。
「青には、この色とこの色、赤にはこの組み合わせが合うから、その通りに色を塗ればいいだけだよ。とりあえず、自分がいいと思う感じに塗ればいいよ。」
といわれ、自分流に美しいと思う組み合わせで塗ってみました。
しかし、なんだか違う。
「色彩感覚」を学ぶのは難しいのだとわかりました。
メキシコの職人の色彩感覚は、彼らが今までの人生の中で自然習得してきたものであって、だれかに教えてもらったものではないのです。
メキシコで生まれ育って、メキシコの色の中で暮らしてきたからこそ培われる、美的センスなのでしょう。
「メキシコらしい色」とは何か?
「メキシコらしい色」とはよく聞きますが、具体的にはどんな色のことなのでしょうか?
今までのインタビューや個人的に調べた結果から、「メキシコらしい色」「メキシカン・カラー」の特徴についてまとめてみました。
- 明色
- 原色・ビビッドカラー
- カラフルな色合い
- 反対色の組み合わせ
上2つ(1,2)は、色自体の特徴。
そして下の2つ(3,4)は、色の組み合わせの特徴です。
色自体の特徴
色自体の特徴は、「明色」であることと、「原色やビビッドカラー」であることの2点です。
明色とは、暗色の逆のことで、「明るい色」のことです。
その中には原色も含まれますが、それに白色を足していくような、パステルカラーのような色合いも含みます。
また、原色やビビッドカラーは、こんな色のことです。
- 彩度が強い
- はっきりしている
パッと見て、印象的で生き生きしている色合いのことを指すことが多いです。
メキシコでは、このような色のことを「Color Vivo(コロル・ビボ)」と呼んでいます。
「Color Vivo」とは、スペイン語で「生きている色」という意味。そのまま、花や植物、いきものが持つ、生命力溢れる鮮やかな色のことです。
この「生きている色」という概念は、多くの職人が持っているメキシコ共通の「センス」で、メキシコ各地で見られる色とりどりの手仕事は、実はここに原点があります。
色の組み合わせの特徴
まず「カラフルな色合い」については、とてもあいまいな言い方になってしまいましたが、つまり「たくさんの種類の色が使われている」ということです。
メキシコらしい色とは、だいたい「何色かの組み合わせ」になります。
ビビッドな色だけでは、パッと見て「メキシコらしい」と思うことは難しいですが、色の組み合わせで一気に「メキシコらしさ」を生み出すことができます。
さらに、もう一つの要素である「反対色の組み合わせ」によって、かなりメキシコらしさが出てきます。
「反対色」は、色相環(カラーサークル)の正反対にある色の組合せのことで、「補色」とも呼ばれます。
たとえば、上の図でいうと「緑と赤」、「紫と黄色」、「青とオレンジ」などの組み合わせです。
この組み合わせによって、青系、赤系などといった「色の統一感」がなくなり、独特な組み合わせで色をデザインすることができます。
絵付けはもっと複雑で奥深い世界
ここまで知ると、「自分にもメキシコ流絵付けができそう」と思うのですが、実はそう簡単にはいきません。
わたしも、それを知ったうえで何度か作ったことがあるのですが、ことごとく「納得できない」結果に終わりました。
なんだかパンチが足りなかったり、デザインが単純になってしまうのです。
この経験から、「絵付けは、単純に明色の原色を反対色でカラフルに塗ればメキシコらしくできるものではない」、ということを学びました。
そこでわかったのが、メキシコの職人たちは、ここで紹介した色のルール+今までの経験から培ってきた独自ルール・スタイルで制作している、ということです。
その「独自ルール・スタイル」によって、自分の作品に個性を与え、職人としての自分をも特徴づけていくのです。
「独自ルール・スタイル」は、色を効果的に使うための「模様」だったり、「表情」、そして「色のバランス感覚」だったりします。
色の組み合わせの知識だけでは到達し得ない、とても複雑で奥深い作業なのです。
パワフルで存在感が溢れすぎるメキシコの”色”
メキシコの手仕事をずっと見ていると、その作品たちのカラフルさに圧倒されることがあります。
メキシコには、雑貨だけでなく、家の壁や家具、そして街自体もカラフルなもの・ところが多く、人々は色に囲まれて暮らしています。
そんな中だと、職人たちの作るカラフルなものたちもうまく日常になじんでいます。
しかし、ひとたびメキシコ雑貨を日本に持ち帰って飾ってみると、あまりにカラフルすぎたり、存在感がすごすぎたりして、部屋のバランスがおかしくなります。
参考:「メキシコの仮面はおもしろい!③ どこにでもいるアイツは誰だ」
メキシコ雑貨レベルにカラフルで存在感のすごいものは、他になかなかないんですよね~…。
なのでバランスを取るためにどんどん他のメキシコ雑貨を置いていった結果、気付いたら部屋がメキシコ雑貨まみれ、色まみれに、ということも。(笑)
メキシコのものは色を沢山使ったカラフルなものが多いのですが、それひとつで完成してしまっているので、「他のものと合わせる」のが難しいんです。
それは、ファッションしかり、家のインテリアしかり…。
このあたりは、もしかしたらメキシコのカラフルさの「弱点」なのかもしれません。
「(クセが強すぎて)どう使えばいいのかわからない…!」という。
第二のメキシコのモノ作り
そんな悩みというかジレンマは、おそらく世界中のメキシコ好きが抱えてきたもので、
最近は、「欧米のデザイナーとメキシコの職人がコラボしたモノ作り」がよく行われています。
欧米のデザイナーとメキシコの職人がコラボすることにより、より外国からのニーズに合う商品を開発する、というわけです。
たとえばカバンだと、色の数を少し控えめにしより多くの場面で使えるようにしたり、どんな服にも合わせられるようにするなど、「多くの人にとって使いやすいモノ」を生みだしています。
「外国人好みにデザインを変えていくのは良くない」という意見もありますが、より多くの人にメキシコの手仕事を評価してもらえるなら、職人にとってはそれが一番大切だと思います。
メキシコの「色」は魅力的!
メキシコにある「色」は、どんな分野においてもとても魅力的です。
街を歩けば家の壁やドアはカラフルで、お土産屋さんはさまざまな色の商品で溢れかえっています。
その中から、自分のお気に入りのデザインを探し出すのもとってもワクワクします。
そんなときが、メキシコにいて一番楽しい瞬間だったりします。
「欧米のデザイナーとメキシコの職人がコラボしたモノ作り」について紹介しましたが、その中でも、メキシコの色や「メキシコらしさ」はしっかり残され、活かされていました。
メキシコの色使いから学べるものはとても多く、世界中のたくさんのアーティストやデザイナーが影響を受けている国でもあります。
インスタグラムで「mexicancolors」のタグで探してみても沢山の写真が見つかり、「メキシコの色使い」という概念と特徴が、世界的にも受け入れられているということがわかります。
きっと、メキシコからカラフルなものがなくなる日は永遠に来ないと思います。今でもメキシコ人は色を愛し、色と共に暮らし続けているからです。
ぜひ、色が溢れる魔法のような国・メキシコを訪れてみてください!