メキシコ中部の山間部に住み「メソアメリカの時代からの伝統的な生活を守り続けている民族」のひとつである「ウイチョル」。
この記事(シリーズ)は、かれらの伝統的な儀式についての現地調査をした時の記録です。
民族調査の面白さ
「現地調査」というと、とてもカッチリしたものを想像する人もいると思いますが、まったく堅苦しいものではありません。
実際に対象の人々と触れ合うなかで繰り広げられる驚きに溢れた日々の中には、笑いあり、時には涙あり。(笑)いつも、とっても人間味あふれた交流が繰り広げられます。
ウイチョルについて
わたしは、大学生時代に「ウイチョル(Huichol)」という民族の作る、「民族アート(「ウイチョル・アート」などと呼ばれます)」についての研究をしたいと思っていました。
…というのも、彼らのアートがすごく好きだったからです。
ウイチョル・アートは、とにかくカラフル。
カラフルなものが溢れるメキシコの中でも、1,2を争う鮮やかさです!!!
↑ ウイチョル族のビーズアート
↑ ウイチョル族の羊毛アート
メキシコシティのマーケットで始めて彼らのアートを見たときは、その鮮やかさと、不思議な文様と柄が表す彼らの世界観に心を奪われました!!
あと、初めて見るビーズの使い方にもびっくり。
ビーズは「糸で繋げるもの」だと思っていたけど、張りつけるという手もあったか~、と。
↑すごくないですか、この細かさ?!
とにかく、強烈に「このアートを作るウイチョルと呼ばれる人々に会いたい!話してみたい!!!」と思いました。
シャイなウイチョルの人々
というわけでまずは、メキシコシティにいるウイチョルの人たちを探しました。
ネットや書籍で調べてみると、彼らが住んでいるのはナヤリト州やハリスコ州の山間部とのことだったので、メキシコシティにはいないのかな〜なんて思ってたのですが、
確かに「山間に住む民族」ではあるものの、今の時代には、都市に移ってきているウイチョルの人も沢山いて、メキシコシティでも、ビーズアートを売っていたり民族衣装を着てのんびりしていたりと、わりと普通に見かけることができました。
…しかし!!!
勇気を出していろいろ話しかけてみても、、なかなか話が弾まない。
「メキシコ人とは、少し話せばアミーゴになれる!」
と信じていた私にとって、目も合わせてくれず、むしろ「早くどっか行ってくれオーラ」を出しはじめる彼らの塩対応は、なかなかのカウンターでした。
メキシコ人の友達にこのことを相談すると、
「彼らはシャイだから。あと、スペイン語が苦手だからあまり話したくないのかもしれない。」
と言われてしまいました。
他のメキシコ人の友達にもウイチョルの印象について聞くと、見方は人ぞれぞれですが、
- 「排他的」
- 「ストイック」
- 「シャイ」
- 「スペイン語が完ぺきじゃない」
みたいなことを言っていました。
彼らの言い方には、少し差別的なニュアンスを感じることもありました。
メキシコでは、先住民の人に対する差別が今もまだあります。
その差別はかつてのような「激しく嫌悪するもの」ではないものの、なんとな~く「彼らは自分たちとは違う」と線引きをしていたり、あまり先住民の文化や考え方を積極的に理解しようとしないので、ちょっと心の距離が遠いかんじです。
みんなから話を聞いていて、とにかく
「メキシコ人にとっても、ウイチョルの人たちと友達になるのは少しハードルが高い」
ということが、なんとな~くわかりました。
「あわよくば、ウイチョルの友達がいる人がいれば紹介してもらえないかな~。」
なんて考えていたのですが、そんな甘い期待は打ち砕かれたので、やっぱり自分でコツコツと関係性を作っていくしかないな、と覚悟を決めました。
そして、
「彼らはスペイン語が苦手」ということでしたが、ウイチョルの言語(ユト=アステカ語族の言語、ウイチョル語)も、もちろんウイチョルの友達ができないことにはわかるようになるわけがないので、
「わたしもスペイン語は完ぺきじゃないけど頑張ってるんだ!!」
という多少押し付けがましい精神で、
「どこかに、フレンドリーなウイチョルの人がいるかも…!」
という微かな希望を胸に、そして数々の塩対応に負けず(笑)、ウイチョルの人がいる露店などをいろいろ見て回っていました。
フレンドリーなウイチョルの人との出会い
メキシコへの訪問3度目にして、ようやくフレンドリーなウイチョルの男性「ホルヘ(仮)」に出会うことができました!
ホルヘは、「自分たちの文化は自分たちの中だけのものにしておきたい。あまりよそ者に教えたくない」というウイチョルの人とは真逆の考え方をしていて、
「ウイチョルの文化を広めて、人々に知ってもらうことが、自分たちの文化を守っていくことに繋がる」と信じていました。
そしてウイチョルの人々の信じる「宗教観」や「世界観」についても、わざわざわたしのために時間を作っていろいろなことを教えてくれました。
さらに、「特別に聖地 “レアル・デ・カトルセ” でウイチョルの伝統儀式を見学させてあげる」という夢のような提案をしてくれました。
「レアル・デ・カトルセ」とは
まず、ウイチョルは、メキシコで数少ない民族衣装を着て伝統の暮らしを守り続けている人の割合の高い民族でもあり、現在でも様々なユニークな文化や習慣をもっています。
そのひとつが、毎年行われる「巡礼」。約1か月間かけて、歩いて山々を超えていきます。
その長い長い巡礼のゴール地点が、「レアル・デ・カトルセ(Real de Catorce)」なのです!
レアル・デ・カトルセは、彼らにとっての「世界の中心」であり、「太陽が生まれた場所」だと信じられています。
普通の人にとっては、ここレアルデカトルセは「廃坑まみれのただの山奥のさびれた村」だった(現在は、その神秘的な景観が人気を呼んでメキシコ観光政府の定める「魔法の村(Pueblo Magico)」認定も受けています。)のですが、ウイチョルの人々にとっては大昔からとっても神聖な場所、「聖地」なのです。
いざ、聖地レアル・デ・カトルセへ
レアル・デ・カトルセに向かう日、「砂漠で夜通し儀式を行う」とのことだったので、近所のウォルマートでテントを買い、寝袋も持って旅立ちました。
バスターミナルで待ちあわせをしていたら、ホルヘが大きなボロボロのトランクを持ってやってきました。
(あの巨大トランクの中に、儀式用具がたくさんつまっているのかなあ)
と、ワクワクしながらバスに乗りこみ、バスに乗りこむ前に荷物チェックがあったので、彼の荷物の中身をチラ見してみると、なんかの棒?らしきものが一本入っているだけでした。
「いやカバンでかいわ!!」と心の中でツッコミながら、でも、もしかしたらそのスペースにも何か意味があるのかもしれないと思い、考えるのをやめました。
そんなこんなで聖地「レアル・デ・カトルセ」に向かいます!
つづく。