メキシコの、死者の日や独立記念日に欠かせない切り絵の飾り「Papel Picado(パペルピカド)」について紹介します。
もくじ
メキシコ流・切り絵「パペルピカド」とは?
パペルピカド(Papel picado)とはスペイン語で「穴を開けられた紙」という意味の、メキシコ流の切り絵のことです。
そのデザインは、幾何学模様から花、鳩、死者の日のシーズンにはガイコツなどさまざま。
使われる場面に応じて、たくさんのモチーフのパペルピカドが作られています!
そして、それを万国旗のように糸で繋げてにぎやかに飾り付けるのがメキシコ流です。
パペルピカドが使われる祭り
パペルピカドは、メキシコのさまざまなお祭りを彩ります。
- イースター
- クリスマス
- メキシコ独立記念日
- 死者の日
- 結婚式
- 15歳のお祝い
- 教会のイベントなど
特に、11月の「死者の日」にはたくさんのガイコツ柄パペルピカドが街中に飾られ、とてもにぎやかな雰囲気になります。
特に、死者の日に各家庭で作られる「オフレンダ(祭壇)」には、たくさん使われます!
中には、ビックリするほど細かい作りのものも。
死者の日のパペルピカドは、ガイコツ柄が多くかわいらしいので世界中で人気です。
そして9月にあるメキシコ独立記念日には、街中が赤、緑、白のメキシコ国旗カラーに彩られます!
メキシコ独立記念日のみんなの合言葉、「VIVA MEXICO(メキシコ万歳)」と書かれた旗も。
こちらも、9月の独立記念の飾り付け。
よく見ると、絵柄が蛇をくわえたワシ(国旗に描かれているシンボル)や、メキシコを代表する女流画家フリーダカーロ、大砲など独立記念日らしいものになっています。
パペルピカドの起源
パペルピカドは、中国の剪紙(せんし)にとてもよく似ています。
というのも、実はパペルピカドはメキシコに移民としてやってきた中国人が作りだしたものだからなのです!
パペルピカドの歴史は、ほかのフォークアートと比べるとあまり古くはありません。
1950年ごろに初めて作られ始めたものなので、まだ100年も経っていないのです。
メキシコの昔の紙
500年以上前のプレヒスパニック時代、メキシコではイチジクの樹の皮を使った伝統的な紙作りが行われていました。
その紙は、「アマテ」と呼ばれて現在でもイダルゴ州やプエブラ州に住むオトミ族によって作られています。
パペルピカドに使われる薄紙は「パペルチノ」と呼ばれ、アマテとは違う種類の紙です。
アマテには、オトミ族の世界観や宗教観を表した切り絵がされ、その切り絵版アマテはハサミを使って作られています。
スペイン人の到来と紙の変化
その後、スペイン人がアメリカ大陸に到着し、メキシコ(アステカ、マヤなど)を征服します。
アマテを含む、先住民文化・民芸品の生産や使用は禁止され、その後は、わたしたちにもなじみのある普通の紙(ヨーロッパで作られるようなもの)がメキシコで使われるようになります。
1900年代中期、スペイン人やその血を引く大金持ちはアシエンダという大農園を持っていて、そこでいろんなものを販売していました。アシエンダで働く人や近くに住む人々は、そのアシエンダで必ずものを買わなければなりませんでした。
そこにあったのが、パペルピカドが作られるようになる薄紙でした。
中国人移民の影響
当時メキシコに移民としてやってきた中国人は、春節のたびに故郷を思い出しながら、その薄紙を買い、剪紙を作って飾っていました。
パペルピカドに使われる紙は、中国人が使う紙なので「パペルチノ(Papel Chino=中国の紙)」と呼ばれるのです。
そして彼らの作る紙飾りが人気となり、のちにお祭りごとに街や建物を飾るパペルピカドになりました。
パペルピカドの作り方
中国の剪紙がハサミやナイフを使って作られるのに対して、パペルピカドは彫刻刀の様な特別な道具「フィエリート」によって作られています。
パペルピカドは、伝統的に手作業で作られています。
パペルピカド作りに必要な材料
- パペルチノ(薄紙)
- 普通の紙
- ペン・えんぴつ
- セロハンテープ
- カッター
以上。
「パペルチノ」は日本にはあまり出回っていないので、ペーパーフラワーを作る時に使う「お花紙」の、大きめサイズのものを用意するといいと思います。文具店や、100円ショップで購入できます。
とにかく、なるべく薄い紙にするのがポイントです。
また、カッターについては、切り絵用カッターがある場合はより良いです!
作り方の手順
1.デザインを決める
どんなデザインのパペルピカドにするのかを決めて、普通の紙の方に下絵を書きます。インターネットからデザインを探して持ってきて、プリントアウトするのもありです。
すべてのパーツが繋がっているデザインにするようにだけ、気を付けてください。
2.パペルチノを重ねる
パペルチノを、角を合わせて10枚~30枚くらい重ねます。この重ねた分を、一気に作っていきます。
慣れている人は、50枚くらい重ねてもOK。
メキシコのパペルピカド職人は、一気に50~100枚重ねて作ります。
3.下絵を上に乗せて固定する
デザインを描いた下絵を、重ねたパペルピカドの上にセロハンテープなどで固定します。
4.切り取っていく
重ねた紙をデザインに沿って切り取っていきます。
カッターの刃が、垂直に入るようにするのがポイントです。
5.完成!
すべて切り取れたら、下絵を外して完成です。
↓
パペルピカドの作り方の行程は、いたってシンプルです。
しかし、その工程は熟練の職人でないと難しく、特に複雑な柄になるとたくさんの紙を重ねて作るのはかなり難しくなります。
最初は、単純な幾何学模様などの簡単なデザインから始めるのがいいと思います。
また、ハサミを使って折りたたんだ紙を切っていく方法もあるのですが、それだと数枚ずつしか作ることができず大量生産が難しいので、大きなパペルピカドの工場では紹介したような方法で一気に数十枚のパペルピカドを作っています。
パペルピカドのある景色・インテリア
パペルピカドを飾りに使った景色や、インテリアを見てみましょう。
屋内のパペルピカド
大きめの雑貨店には、「メキシコらしさ」を演出する目的でパペルピカドがよく飾られています!
にぎやかで楽しい雰囲気になるので、ぴったりですね^^
ちょっと小洒落たレストランやカフェに行くと、そのお店の雰囲気にあったカラーのパペルピカドが飾られていることも。
円形天井には、こんなふうに中心から広がる花火のようにパペルピカドを飾りつけます。
死者の日のグッズ専門店でも、パペルピカドが飾られていました^^
半屋内のパペルピカド
半透明のトタン屋根などの日の光が少し入るような明るい場所にも、よく飾りつけられます。
パペルピカドは薄く、日の光を通すので、木漏れ日の様なかんじになってよりキレイに見えるのです。
シンプルな空間も、パペルピカドで一気に華やかで楽しい雰囲気になります!
日が少し入るパティオの空間。独立記念日のメキシコカラーのパペルピカドがたくさん。
屋外のパペルピカド
真っ白な街並みのタスコを、カラフルに彩るパペルピカド。
独立記念日の前なので、メキシコカラーです^^
チアパス州の村のお祭りにて。どんなお祭りにも、パペルピカドは必需品。街中が華やかに彩られます。
教会で行われる伝統行事の様子。教会の上の方から、放射状にパペルピカドが飾りつけられています。
こちらも、放射状の飾り付け。
太陽の光をあびて、壁に映るパペルピカドの影もかわいいです^^
パペルピカドは普通、常設するものというよりもイベントごとに飾りつけるもの。紙の質も薄くて弱いので、一週間くらいですべて撤去することが多いようです。
しかし、最近は紙でなく薄いビニール製のものも売られています!
ビニール製のものは雨に強く、破れにくくて丈夫なので、屋外の飾り付けにも使われ、最近は紙のものよりも人気なようです。
パペルピカドはお祭りの必需品!
メキシコにはカトリックの祭日から地域のイベント、土着の宗教の行事まで本当にたくさんのお祭りがあります。
そして、パペルピカドはその多くで飾りに使われています。
むかしから、メキシコでは「パペルピカド=お祭り」という印象なので、パペルピカドが飾りつけられるとみんなテンションが上がります^^
パペルピカドは、メキシコのお祭りに欠かせない飾りなのです!
この先も、きっとメキシコのお祭りをカラフルに楽しく彩る、大切な民芸品であり続けていくでしょう。