骸骨夫人「カトリーナ」は、死者の日を象徴するアイコンとして古くからメキシコ人に愛されています。
この絵に描かれている骸骨は、1913年に当時の有名なイラストレーター「José Guadalupe Posada」によって描かれた、「カトリーナ」です。
もともとは、「La Calavera Garbancera(住み込み女性のガイコツ)」と呼ばれていました。
カトリーナがかぶっているのは、当時の貴族女性がかぶっていた帽子です。
カトリーナが生まれた背景
ポサダ氏は、この骸骨・カトリーナを「当時のメキシコの貴族女性のパロディー」として皮肉を込めて描きました。
当時のメキシコの貧富の差は、ひどいものでした。
貴族やお金持ちは贅沢の限りを尽くし、楽しい幸せな日々を送っていました。しかし先住民はとても貧しく、苦しい日々を過ごしていました。
ポサダ氏は、次々に消えていく先住民文化に危機感を持ち、先住民たちの伝統文化「死者の礼拝」という習慣を守るために、物語を書きました。その物語の中の挿絵のひとつが、カトリーナでした。
カトリーナは、死者の日のために描かれたわけではなかったのですが、すぐに死者の日のアイコン的存在としてメキシコ中に広がりました。
カトリーナの正体
実はカトリーナは、元々はガイコツではありません。
そのヒントは、もともとの名前「La Calavera Garbancera住み込み女性のガイコツ」にあります。
オリジナルの冊子では、カトリーナの正体は、あるメキシコ先住民の女性なのです。
植民地後、スペイン人から徹底的に自分の文化を否定され続けた先住民の人々は、自分たちの文化を恥じるようになってしましました。
カトリーナは、当時のヨーロッパ人のスタイルを真似て、自分の浅黒い肌を白人のように見せるために白塗りのメイクをした先住民の女性なのです。
「住みこみ女性」というのは、当時の貴族の家で、先住民女性が女中としてよく住み込みで働いていたことからきています。
また、当時自分の先住民文化を捨て、ヨーロッパ風の文化ばかり追い求める先住民に与えられた、皮肉なニックネームでもありました。
壁画師ディエゴ・リベラとカトリーナ
カトリーナの人気に火を付けたのが、メキシコを代表する有名壁画画家、「ディエゴ・リベラ」による「Sueño de una Tarde Dominical en la Alameda Central(アラメダ公園の日曜の午後の夢)」という作品でした。
この作品には、過去400年にわたるメキシコの重要人物が描かれました。壁画の作者であるリベラ自身と妻の「フリーダ・カーロ」、そしてカトリーナの作者であるポサダ氏も描かれています。
ここで初めて、カトリーナの体と服装が描かれました。貴族風の帽子に合わせ、服も貴族女性の典型的な装いです。
リベラがここにカトリーナを描いたのは、メキシコ人が死を受け入れることに寛容であることと、死者の日の起源であるアステカ神話の女神、「死の夫人」の呼び名を持つ「ミクトランシワトル」をメキシコの重要な歴史として人々に思い出させるためだったようです。
それ以来、カトリーナの名はメキシコ中に、そして世界中に知れ渡り、カトリーナの人気は不動のものとなりました。
メキシコでは、毎年死者の日になるとカトリーナグッズが市場を埋め尽くします。
パレードではカトリーナの山車がメインストリートを通り、人々はカトリーナのフェイスペインティングをして死者の日を楽しみます。
カトリーナは、メキシコの人々の重いと歴史が詰まった、メキシコで最も愛されている骸骨なのです。
以上、世界で最も有名なガイコツ「カトリーナ」の正体と誕生秘話でした。
2017年度の死者の日の様子を更新しました!