メキシコ・ミチョアカン州の山間に、「アンガンゲオ村」という小さな村があります。
このアンガンゲオ村の近くの山の中には、「モナルカ蝶保護区」がいくつか存在し、そこでは毎年冬になると、何万羽もの蝶が森の木々と空を埋め尽くす、圧巻の「蝶まみれの世界」が見られます!
この景色が、「世界で最もたくさんの蝶を見られる場所」として、有名になってきています。
もくじ
「アンガンゲオの幻の蝶」とは?
集まるのは、「モナルカ蝶」というオレンジ色の蝶だけ。黒い縁取りにオレンジ色が鮮やかな蝶で、白い斑点があります。
(↑)ライフサイクルは、こんな感じ。
しかし、幼虫や蛹、卵はアンガンゲオでは見られません。彼らはカナダで産卵→成長し、4,500kmの距離を飛んでやってくるのです。
毎年やってくる蝶の数は、なんと数億羽と言われています。
わたしも実際に目にして驚きましたが、本当に「木が蝶まみれ」状態でした!
蝶がとまりすぎて、木々はオレンジ色に染まり、蝶の重みでたわんでいる枝もあるほど。
(↑)よく集まる木はこんな状態に!!(全然集まらない木と、こんな風に大量に集まって幹が見えないような木の違いは何なのか、謎…。)
ユネスコの世界自然遺産
このアンガンゲオの保護区は、2008年にユネスコにより世界自然遺産に登録されました。
それ以前は、ほとんど知られていない「秘境」だったのですが、最近は毎年たくさんの観光客が、その不思議な景色を見にやってくるようになったんだそう。
(↑)わたしが行ったのは、アンガンゲオの少し手前にある「チンクア保護区」です。写っているのは、ガイドさん。
世界遺産のため、現地には保護官兼ガイドさんがいて、一緒に森を回ります。
アンガンゲオの森でモナルカ蝶を探すトレッキングへ
わたしは一人で行ったのですが、ガイドさんと数人の他のメキシコ人観光客と一緒にグループを組んで行くことに。
森の中を進んでいきます!
とってもいい天気です!
道を進んでいくと、オレンジ色のサインがついています。
この「ちょうちょの絵の案内板」があるので、ルートもわかりやすいです。
ミチョアカンの山間地帯を一望できる、ビューポイント(展望台)にも寄ってくれました。
絶景!!(でも早くちょうちょが見たい)
森に生えている、植物についても色々教えてくれて面白かったです!
蝶がいるエリアへ
そして、ついに…
ちょうちょを一匹発見!!
羽を広げたり、閉じたりしていました。
「もうじき、蝶の多いエリアに入る」という前に、ガイドさんから注意事項を聞きました。
- 走ってはいけない
- 大きな声を出してはいけない
- カメラのフラッシュはNG
などなど。基本的に、蝶を驚かせないように注意しなきゃいけないみたいです!
そして、ドキドキしながら森の奥へ進むと…
いっぱい出てきた。
木の上にも!!
ところどころに、「オレンジの塊」が見えてきました!!(この時点で、頭上には数百匹のちょうちょが元気に飛び交っています!!)
うお〜!たくさんいる!!!(オレンジに染まっている部分は全部ちょうちょ。)
アップすると(↓)
(↑)ちょっとわかりにくいですが、全てモナルカ蝶です!ものすごい量!!
モナルカ蝶の長い旅
蝶を見ながら、ガイドさんが小声で「モナルカ蝶の大移動」について教えてくれました。
モナルカ蝶は、カナダに住む蝶ですが、冬になるとその厳しい寒さから逃れるために、なんと4,500kmもの距離を移動して南に下ってきます。
そして、移動した全ての蝶たちがなぜかここアンガンゲオ周辺の森(保護区)に集合するのです。
しかし、「なぜここに集まるのか」、「蝶たちは移動ルートをどのように覚えているのか」など、詳しいことはまだ何もわかっていません。
研究者や生物学者が研究を尽くしても、いまだ重要な部分は、全て謎に包まれています。
ただ、「目の前のこの蝶たちは、途方も無い4,500kmもの距離を移動してここに集まってきたのだ」と考えながら眺めていると、とっても不思議な気持ちになりました。
蝶の羽音を聞いてみよう
「蝶の羽音」を聞いたことがありますか?
おそらく、蝶を見た事があっても羽音を聞いたことがある人はほとんどいないと思います。それほど、蝶の羽音は小さく、かすかなのです。
「蝶には羽音なんてないのでは?」と思う人もいるでしょう。(わたしも聞いたことなかった。)
しかし、ここでは、無数の「蝶の羽音」を聞くことができます。その音は、とても静かなのにどこか騒がしいような、不思議なもの。
「数千人の人が、一度にコソコソ話をしている」ような、喩え難い音です。
保護区内の蝶がいるエリアでは、蝶を驚かさないために、走りまわったり声を出すことは一切禁止です。なので、蝶たちの羽音がより際立ちます。
音をたてないように気をつけながら数億の蝶の羽音を聞き、未だかつて見た事のないような数の蝶を目の前にしていると…まるで、自分が異世界に迷い込んだような錯覚に陥りました。
この後、また静かに移動してこの場を去りました。
さようなら、蝶たち〜!
アンガンゲオの森のモナルカ蝶に会いたい人へ
アンガンゲオの森のモナルカ蝶に会いたい人に役立つ情報をまとめました。(「行き方」は最後に紹介します。)
1. アンガンゲオの蝶がやってくる、ベストシーズン
アンガンゲオの蝶を見るのに最適なのは、1月~3月まで。
「11月から見られる」と書いてあるガイドブックも多いのですが、11,12月はまだ蝶の数が少なく、「数えきれないほどの蝶が空と森を埋め尽くす」ような景色は見られません。
せっかく行くなら、蝶が沢山いる時に行きたいもの。
毎年森を管理している現地ガイドさんに直接聞いてみたところ、毎年2、3月が最も蝶の数が多い時期なのだそうです!
2. 天気のいい日に行こう
モナルカ蝶は、よく晴れた暖かい日に活発に動きます。
雨の日は、気温が下がりあまり飛び交っている様子は見られず、曇っている日も、日が照っている日ほどは活発にならないのだそうです。
モナルカ蝶の見られるエリアまでは森の中をトレッキングしていきます。寒い日は、蝶たちが(気温の関係から)蝶が森の奥の山の反対側まで移動してしまい、より長い距離をトレッキングしなければならなくなります。
よく晴れた暖かい日は、より短い距離のトレッキングで蝶たちに遭遇でき、蝶たちもとても活発に飛び回る最高の状態で観察できるのだそうです。
というわけなので、天気予報をしっかりチェックして、なるべくいい天気の日に行くのをおすすめします!
まとめ:アンガンゲオの蝶は、一見の価値あり!
以上、アンガンゲオの「幻の蝶」、モナルカ蝶についてでした。
とても貴重な体験になり、心から「行ってよかった!!!」と思いました。あんなに大量の蝶を見たのは初めてだし、「自然の神秘」を全身で感じられました。
興味のある人は、ぜひ行ってみてください♪
おまけ:ミチョアカン州の刺繍にも描かれる蝶たち
このモナルカ蝶の保護区がある森は「ミチョアカン州」にあります。
そしてチョアカン州の有名な手仕事(民芸品)である「ミチョアカン刺繍」にも、よく蝶が刺繍されています。
ミチョアカン刺繍の職人の方に話を聞いたところ、「これはアンガンゲオのモナルカ蝶だよ。」と教えてくれました。
(↑)空を飛ぶ、カラフルな星のようなものが蝶。
モナルカ蝶は普通全部オレンジ色なのですが、刺繍では色とりどりの蝶が空を飾っています。ミチョアカンの人にとってここの蝶は、大昔からとても特別で大切なものなのです。
刺繍は、アンガンゲオの村でも手に入れることができます。ミチョアカンのお土産にもおすすめ!とても可愛い、伝統的な手仕事ですので、ぜひチェックしてみてください^^
わたしも、ミチョアカンで買った刺繍を見ていると、いつもあの数万、数億の蝶たちの羽音と、あの時に感じた大自然の神秘を思い出します。
その度に、あの時に見たアンガンゲオの蝶たちが、いつまでもこの不思議な旅を続けてくれるよう、祈っています。
メキシコシティからアンガンゲオへの行き方
行き方については、こちらの記事を参考にしてください(↓)
メキシコシティから日帰りでいけます。ツアーもありますが、バスで自力で行くこともできます!