今回は、ディズニーピクサー映画『リメンバーミー(洋題:Coco)』に隠された秘密を紹介します!
「ピクサー好きしか気付かない秘密」や「隠れキャラ」、「隠しネタ」の存在はもちろんのこと、この記事では「メキシコ好きしか気付かないポイント」も合わせて紹介していこうと思います♪
絶対にもう一度物語を見たくなるような、「あなたが絶対に気付かなかった、リメンバーミーの秘密」とは?!
多少はネタバレを含むので、映画を観てから読むのをおすすめします^^
隠れピクサー
ご存知の方も多いかもしれませんが、ピクサーはとても遊び心溢れる映画会社のようで、映画作品には毎回たくさんの「秘密」が隠されています。
この秘密は、英語で「Easter Eggs(イースターエッグ)」と呼ばれ、ピクサーの映画が公開されるたびにピクサーファンは「今度の映画では、どこにどんなイースターエッグが隠されているんだろう??」と物語とは別のところで「秘密探し」に夢中になっていることもあるんだとか。
そんなピクサー、もちろん今回の『リメンバーミー』にもたくさんの秘密を仕込んできていました!!中には、何度も何度も見ないと、もしくはスロー再生にしないと気付かないようなイースターエッグも存在します^^
隠れキャラ
隠れキャラを紛らわせるのは、ピクサーの十八番。今回はどんなキャラクターが隠れていたのでしょうか?
トイストーリーのウッディとバズ
ウッディとバズは、メキシコ風くすだま「ピニャータ」として登場します。
ピニャータとは、メキシコでお祝い事や祭りの際に使われる「叩いて中のキャンディーを割り落とす」イベントの際に使われる張り子のことで、実際メキシコにはいろいろなデザインがあります。
ウッディとバズのピニャータは、物語の序盤、ミゲルが故郷のサンタセシリアの街を駆け回る際にチラっと一瞬映りこんでいました。
モンスターズインクのマイク
ウッディとバズのピニャータの奥には、モンスターズインクに出てくる緑で一つ目の怪物「マイク」の姿も!というわけで、マイクもピニャータとして出演してます。(↑画像参照。)
メキシコには、たくさんのピニャータが売られていてピニャータを専門で作る職人もいるのですが、あまり著作権とかは関係ないらしく(笑)、ディズニーキャラクターを模したピニャータが実際に作られて販売されているのを見たことがあります^^ メキシコでの現地調査を行った制作チームによると、彼らも「ピクサーキャラクターを模したピニャータをたくさん見かけた」そうで、そこからこの隠れキャラのインスピレーションを受けたのだそうです!
「コピーをさらにコピーする」という意味では、かなり斬新。「著作権が…」「コピーライトが…」などとうるさく言わず、むしろそこからインスピレーションを得るあたり、懐が深い(?)というかクリエーターらしいですね^^
ファインディング・ニモのニモ&ドリー
あの「ニモ」も出演してます!実はニモは2回出てきています。
1回目は、ミゲルの家の中。
死者の日の祭壇でおばあちゃんが大切そうに写真立ての位置を直すシーンがありますね。そのシーンの右下のところをよ~~く見てみると…!瓶の持ち手のところがニモになっているのが分かると思います!(これ初めて気付いた人は天才レベル…)
(映像じゃないとわかりにくいかもしれません…。)
2回目は、アレブリヘに紛れて。
映画の序盤、サンタセシリアの中を楽しそうに駆け抜けるミゲルは「アレブリヘ」と呼ばれるカラフルに色付けされた木彫りの動物人形がたくさん並べてある、ビビットピンク色のテーブルの奥を通ります。そのたくさん並べられたアレブリヘの中に、ニモの姿が!向かって、テーブルの一番左の隅です。
そしてドリーも、アレブリヘの向かって一番右端に転がっています!正直、一瞬すぎて「青いサカナ」くらいにしか認識できないのですが、ピクサーマニアによるとあれはドリーなんだそう。すごい動体視力…!
Mr.インクレディブルの家族
おなじみMr.インクレディブルの家族5人組は、リメンバーミーの中では「白黒ポスター」として登場しています。
ファミリー全員が映ったポスターで、これが実はピクサーの次回作への伏線になっています。ピクサーの次回作はこのMr.インクレディブルの続編『インクレディブル・ファミリー』『インクレディブル・ファミリー』で、日本では2018年8月1日から公開なんだそうです!
そういえば、リメンバーミーのDVD&Blu-rayを買ったときにもMr.インクレディブルのポストカードがついて来ていました。
トイストーリーのシド(のTシャツ)
トイストーリー1で、おもちゃをいじめる悪ガキとして登場したシド少年。トイストーリー3では、ゴミ捨てのお兄ちゃんとして搭乗しました。が、、リメンバーミーではなんと、ガイコツ(=死んだ人)として登場しています!!
死者の世界で、骸骨に扮したミゲルがヘクターに勇気づけられて初めてステージに上がる前のシーン。様々な他のガイコツの参加者が演奏しているわけですが、その中にシドと同じTシャツを着たガイコツが登場するんです!
ロングヘア―でメガネをかけて、暗くシュールすぎる不思議な音楽を奏でるこのガイコツ。「トイストーリーで登場したシドとキャラクターが違いすぎる!」ということで、ピクサーファンの間では「本当にあれはシドなのか?」「ただ同じTシャツが登場しているだけだ」などと議論が巻き起こっています。もし本当にシドだとしたら、彼はなぜ若くして死んでしまったのか…そしてあの暗さはなんなのか…(そして眼鏡は…)と、疑問は尽きません。
そんな疑問をファンがアンクリッチ監督に投げかけたところ、監督は「彼らは同じバンドが好きだからそのバンドのTシャツを着ているだけだよ。」という回答があったのだそうです。どうやらシドではないみたいですね。
隠しネタ
キャラクター以外にも、リメンバーミーの中にはピクサーにまつわるあらゆる物・事が隠れています。
そして、ピクサーは今までに合計19作品を作ってきているのですが、実はその「すべての作品」に共通して出てきている「定番イースターエッグ」が存在します。それが、この5つ。
- 昔のMacのコンピューター
- 「A113」マーク
- ピザ・プラネットトラック
- ルクソーボール
- ある声優
それぞれ見ていきましょう。
1. 昔のMacのコンピューター
AppleのCEOだったスティーブ・ジョブスは、ピクサーと深いかかわりがありました。ピクサーが立ちあがったばかりのころ、赤字続きのピクサーを多額のポケットマネーで救い、そして上手くディズニーに引き継がせ存続させた人物こそがスティーブ・ジョブスだったのです。
彼に敬意を表して、ピクサーでは作品の中で初期のマックPCやAppleに関係するモノを登場させています。今回のリメンバーミーでも、死者の世界では古いタイプのMacPCのような機械が使用されていました!ガイコツたちの使っている機械をよ~く見てみると、なんだか見覚えのある機械が見つかるかも?!
2.「A113」マーク
「A113」は、ピクサーファンの間では有名なピクサーがよく使う秘密のコード。ピクサー作品のあちこち(車のナンバー、部屋のナンバーなど)にこの数字が出てきます。
この数字は、もともとはアニメーションを学ぶカリフォルニアの大学の教室の部屋番号で、ここで学んだ多くのアニメーターたちがピクサーをはじめアニメーション界で活躍しているんだそうです。
リメンバーミーの中では、この数字は、死者の世界で、ミゲルとミゲルのガイコツの家族が事務員に相談に行った時の部屋番号でした!
3. ピザプラネットトラック
こちらも、様々なピクサー映画に登場している「おきまり」イースターエッグの一つ。黄色い車体にロケットの飾りがついた「ピザプラネット・トラック」は、トイストーリー、ファインディング・ニモなど様々な映画に登場します!
リメンバーミーでは、ミゲルのおばあちゃんが「音楽はダメ!!」と叫びながらミゲルから音楽を遠ざけようとしているシーンで、ミゲルが家の窓から外を見ていたとき、そこを猛スピードで通り過ぎていくトラック(その直後におばあちゃんが窓をバタン!!としめます)が、あのピザプラネットトラックでした!
『#リメンバーミー』ミゲルの冒険3⃣
ミゲル、ミュージシャンを目指したいのにおばあちゃんは【音楽禁止】を徹底⚡
\音楽はだめ!絶対にだめ!!/
~4⃣につづく~ pic.twitter.com/1gR4c5wgkO
— ディズニー・スタジオ (@disneystudiojp) 2018年3月7日
4. ルクソーボール
ルクソーボールも、ピクサー映画に毎回隠されているお決まりの隠れイースターエッグ。黄色と水色のボールに、赤い星マークがついているボールです。
リメンバーミーでは、フリーダカーロの猿のアレブリヘとシェロ犬ダンテが喧嘩をしている時に一瞬映りました。
5. 毎回、隠れ出演している声優
実はピクサーには、「最初の作品『トイストーリー』から最新作まで、すべてのピクサー作品に必ず出ている声優」がいます。それが、John Ratzenberger(ジョン・ラッツェンバーガー)。ジョン・ラセター監督やピクサーのジョナス・リベラから「ピクサー映画のラッキーチャーム(幸運のお守り)」と評されている声優です。
今回の『リメンバーミー』では、彼は、ミゲルが死者の国にやってきたばかりのころ、出入国の手続きをするガイコツを見ているシーンの「歯医者の祭壇に飾られている男性ガイコツ:フアン・オルトドンシアさん」の声を担当しています。
ちなみにこのモニター上で歯医者が映っている背景、「ファインディング・ニモで、海でダイビング中にニモを捕まえて飼っていた歯医者さんのいた診療所」と全く同じ場所なんです!!もしかして、あのニモを捕まえた歯医者さん(シャーマン先生)が…この人?
体系がかなり違う気がするのでわかりませんが、こんなところでニモに繋げてくるとは。ピクサーの遊び心は底を知りません。
トリビア
ちょっとした伏線(ネタバレあり)
1.ペピータの初登場はかなり序盤
「ペピータ」とは、死者の世界で登場するイメルダおばあちゃんの相棒のカッコイイ巨大アレブリヘのこと。ニモも出てくる生者の世界(サンタ・セシリア)で、机の上に並べられたアレブリヘの中に、実はペピータもいるんです!よ~く見てみてください。
2.ギターのヘッド部分の秘密
真っ白で美しい、エルネスト・デラクルスの伝説のギター。死者の世界に迷い込んでしまうこの物語は、ミゲルが教会に偲びこんで、そのギターを手に入れるところから始まります。
そのギター、実はヘッド部分をよ~く見てみるとガイコツの頭の形になっていて、歯が一本だけ金歯なんです。そして登場するキャラクターの中に、一本だけ金歯の人がいます。…そう、へクターです!
これが、実は物語の伏線になっていたんですね~。
メキシコの偉人&有名人たちが登場
1.Frida Kahlo(フリーダカーロ)
フリーダカーロは、実在した「メキシコで最も有名な女流アーティスト」です。壁画家のディエゴ・リベラと結婚し、病気と事故の後遺症による痛みと闘いながら、今まで誰も描いてこなかったようなテーマ(人種、ジェンダー、苦痛)を取り上げてセンセーショナルな作品を作り続けてきました。
そんなフリーダカーロ、物語ではかなり重要な人物(ガイコツ)として登場します。それに、気品のある立ち振る舞い、斬新でアーティスティックな感性、そして相棒のサル。(フリーダカーロは実際、猿と一緒に自分の自画像を描いています。)フリーダカーロ・ファンも関心するほどしっかりキャラづくりがされていました。
リメンバーミーの死者の世界では、生き生きと(?)歩き回るフリーダカーロ。実際には亡くなる前は彼女はまったく動けず、足を切断され生きる希望もなくしていたことを考えると、亡くなってから死者の世界で楽しく暮らしている様子が描かれたのには少し心温まるものがありました^^
2.El Santo(エルサント)
エルサントは、メキシコが誇る伝説的なルチャドール(プロレスラー)。特徴はシルバーのフルマスクで、プロレスだけでなくアクション映画にも出演している国民的ヒーローなんです!
死者の世界で、ミゲルがエルネスト・デラクルスのパーティに忍び込もうとする際に、係員の人が「一緒に写真撮って!!」と頭蓋骨をカポっと外して一緒に写真を撮っているシルバーマスクのガイコツこそが、実はそのエルサントなのです。
3.ほかにも…
メキシコ革命のヒーロー「Emiliano Zapata(エミリオ・サパタ)」や、伝説の映画スターの「Cantinflas(カンティンフラス)」、「Jorge Negrete(ホルヘ・ネグレテ)」「Pedro Infante(ペドロ・インファンテ)」も、デラクルスのパーティに集まっていました!!
サパタ以外の人たちは日本ではあまり知名度はありませんが、メキシコでは誰もが知っているスーパースターたち!この面々を見ると、このパーティーも、それほどまでにVIPの集まった凄いパーティだったことが分かると思います。
ガイコツの肌の質感
実は、骸骨の肌(表面?)の質感もガイコツによってかなり違っています。その基準は、「どれほど生者の世界で思い出されているか」です。
物語の途中、「チチャロン」というヘクターの友人のガイコツが、生者の国の誰にも思い出してもらえずに悲しくも消え去ってしまいます。そんな彼の肌をよーく見ると、ボロボロ、スカスカとしていてツヤがないんです。そして、誰も思い出してくれないヘクターも同じように、スカスカした肌をしています。
それに対して、死者の国にいるミゲルの親戚や家族のガイコツたちの肌はぴかぴかツルツルで、ヘクターやチチャロンの肌とは全然違う!「思い出されているかどうか」は、ガイコツの死者の国での「生命力」として肌に表れているんですね。
これは、映画館やかなり大きめのスクリーン、4Kで見ないと気付かないレベルかもしれませんが、DVDでもよ~く見てみれば、わかると思います!ぜひ、比べてみてください^^
リメンバーミーの「知らなかった秘密」
ここからは、『リメンバーミー』について知られていない秘密を紹介していきます♪
頓挫しかけた映画だった
実は、この映画は一度頓挫しかけています。その理由は、ピクサーの親会社であるディズニーのミスです。
ディズニーは新しい作品を作る時、そのグッズや映画の著作権を守るためにあらかじめ「コピーライト登録」をします。このコピーライト登録は何が申請され、受理されるのかが一般公開されているですが、ディズニーは最初この映画の題名を『死者の日』にしようとしていました。「死者の日」は、ラテンアメリカの伝統的なお祭り。そのお祭りを「コピーライト登録」しようとしたディズニーに対して、ラテンアメリカの人々は「ディズニーが自分たちの祝日を盗もうとしている!」と猛反発しました。
もしコピーライト登録されてしまったら、今後祭りをするたびにディズニーに使用料を支払わなければいけない可能性もあったからです。もちろんディズニーにはそんなつもりはなかったのですが、あまりにも批判が大きくなってしまったためこの申請を取りやめました。
「他者の文化を描くこと」の難しさを実感した制作グループは、「やはりこのテーマ(実在する伝統文化)で映画を作るのはやめた方がいいのではないか。」と議論したのですが、アンクリッチ監督は「保守的になっていたら、創造性は生まれない。チャレンジするべきだ」と主張。その情熱とリサーチが功をなし、メキシコ国民にも受け入れられるような作品を作ることができました。
多くの「ピクサー史上初」が生まれた!
この『リメンバーミー』では、物語の制作を通して実は多くの「ピクサー史上初」が生みだされています。
- 他国の実在する文化を題材にする
例えば、アメリカの映画産業で描かれる「Japan」ってすごく違和感がありますよね。「外国の映画会社が日本を舞台にした映画を作るらしい」と聞いたら、一体どんなステレオタイプな作品になるんだろう、、とちょっと不安になります。だからこそ「他国の実在する文化を題材にする」のは想像以上に難しいことなのです。それでも、先ほど紹介したように、この映画は実在する「死者の日」を含め街の様子や祭りまで、現実にとても忠実に描いています。 - マイノリティのキャラクターを主人公にする
アメリカにおいてはマイノリティである、メキシコ人の少年ミゲル。アメリカが描きがちな「メキシコ人」のステレオタイプなイメージから離れ、誰もが共感できるキャラクターになりました。(その真逆が、トイストーリー3のスペイン語バージョンのバズですね。笑) - メキシコの公用語であるスペイン語をたくさん使った
アメリカの映画産業において、ここまでたくさんのスペイン語が使われている映画は例がありません。 - メインキャラクターの声優はほぼ全員ラテン系
なんと、英語版においてはメインキャラクターのほぼ全員がラテンアメリカのアイデンティティを持つ人達が採用されています。あえて「ラテン訛りの英語」になっていることも! - 初公開はメキシコ
リメンバーミー(洋題:Coco)の初公開は、なんとピクサーの本社があり、作品が制作されたアメリカではなく、題材となり、また調査地となったメキシコでした!
これらの「史上初」はすべて、「他者の文化を描く」という大きなテーマについて、アンクリッチ監督はじめ制作チームが考え、生みだしてきた「工夫」なのです。
スタッフは6年間もの現地調査を行った?!
実は、この作品を作るため、監督や制作チームは約6年間もの間メキシコを行ったり来たりして、現地調査を重ねてきました。この調査があったからこそ、メキシコ人も「これこそが自分の国の映画だ!!」と認められるほどに、メキシコらしさを表現することができたのでしょう。
さらに、現地ではピクサーが普段は絶対に公開しないシナリオやアイデアを現地の人達と共有して、キャラクターを修正したりしてきました。例えば、アブエリータ(おばあちゃん)はよく「サンダルで叩く」わけですが、これは元は木の棒だったそうで、「メキシコの田舎のお年寄りに短期で暴力的なイメージがつくといけない。もっと愛らしいキャラクターにしよう」ということで、サンダル叩きのおばあちゃんになったんだそうです。
ちなみに、このおばあちゃんには実はモデルがいるんですよ~。オアハカの「San Martín Tilcajete村」に住むこのおばあちゃんです。
とても優しそうな人ですね~^^
主人公の声優について
実は、主人公の声優(英語バージョン)は一度変わっています。最初に決まっていた声優は、あまりにも『リメンバーミー』の映像造りに時間がかかってしまった結果、成長して声変わりしてしまい、役を変えざるを得なかったのだとか。そして代わりに見つかったのが、当時10歳だったAnthony Gonzalez(アンソニー・ゴンザレス)でした。
by Disney News Latino:CC BY 3.0
アンソニーは、実は幼少期から「マリアッチ隊」で歌っていた経験があるため、そこで鍛えられ、声の出し方や歌い方がメキシコのマリアッチ流です。安定感があり、よく延びる声で、本当に上手でビックリします…!
最初の子は、せっかく決まったのに可哀想でしたが、一応ちょい役が与えられました。最後のエルネスト・デラクルスのステージで、「出番ですよ~!」と言っているあの青年です。(笑)
「メキシコ訛り」のある英語
キャストを全員ラテン系にしたことによって、登場人物によっては英語バージョンでもかなり「メキシコ訛り」が入っています!!あえて訛らせている場合もあるんだとか。
たとえば…デラクルスが、リメンバーミーの主題歌「リメンバーミー」を歌う時、最初のRememberの「R」がかなり巻き舌(=スペイン語の発音)になっていたり、キャラクターの名前が全てメキシコ流のアクセントで呼ばれていたり。中でも、最初ミゲルが靴磨きをしていたマリアッチのおじさんなんか、かなりメキシコ訛りの英語でした!
メキシコに行ったことのある英語圏の人であれば、「あ~、こんな人いるいる!!」って思うのかもしれませんね。やはり、舞台はメキシコ。その感覚と空気感を持ち続けるためにも、「訛り」は大きな効果があるのでしょう。
メキシコ好きしか気付かないポイント
この映画を見ていて、メキシコ好きな人・行ったことのある人が「あー!!」っと嬉しくなるようなポイントが、実はいっぱいあります。これこそが、この作品が多くのメキシコ人やメキシコ好きに愛される理由でもあると思います^^
冒頭のシーン
ディズニー映画の一番最初に毎回出てくる、「タッタラ~」という音楽と共に夜のシンデレラ城が映るシーン。正直、メキシコ好きはこの時点でテンション爆上がりだったと思います。
なぜなら!あの音楽が「マリアッチ風」になってるからー!!マリアッチとは、メキシコ音楽を演奏する伝統的な小楽団のこと。トランペットやギター、バイオリンなどの楽器でにぎやかに演奏してくれる彼らは、メキシコのお祭りやパーティには欠かせない存在です。
彼らの音楽には中毒性があり、一度聴いたら一気にメキシコに連れ戻してくれるような特徴的な音。その音が、あのシンデレラ城で流れたんです!いつもだったらスキップしたくなるこのシーンで、思いがけず一気にメキシコの世界に連れていってくれました!!
後から知ったのですが、実はこのリメンバーミーでは、重要なテーマである「音楽」にとても強いこだわりがあったみたいです。
音楽へのただならぬこだわり
DVD&Blu-rayに付いてきたボーナスコンテンツに「『リメンバー・ミー』の音楽」というメニューがあり、そこで詳しく語られているのですが、『リメンバーミー』の映画のなかでは、「全ての音楽が、メキシコ人音楽家たちによって、メキシコ産の楽器を使って、メキシコシティでレコーディングされた」んだそうです!
やっぱり、メキシコで使われる楽器には、一口に「ギター」や「トランペット」といっても、メキシコ独特の音色があり、それが観客の心をメキシコに誘ってくれるんだそうです。わたしも、リメンバーミーを見ていて一気にメキシコに帰ったような気持ちになったことで、「音楽の力はすごい!」と実感しました^^
また、BGMや背景で流れている音楽にも相当こだわっているようで、映画を通してメキシコ各地の多種多様な伝統音楽が使われており、「わかる人には故郷を思い出させる」んだそう。もしかしたら、メキシコの人たちが観る時は「あ、この音楽は…自分の故郷の音楽だ!」と嬉しいサプライズがあるのかもしれません。
具体的には、
- ロバの顎の骨をそのまま使った伝統的な楽器「キハーダ」を使った音楽
- オアハカの有名バンドグループ「Banda Tierra Mojada」による演奏
- メキシコの超有名なマリンバ演奏グループ「マリンバ・ナンダヤパ」による演奏
- エルネスト・デラクルスの『モノ・ブランコ』という歌は「ソン・ハローチョ」というメキシコ・ベラクルス州の伝統民族音楽スタイル
- 「タリマ」というステップボードを使った、ステージ(+ヘクターによる「Zapateado」というメキシコ流のタップダンス)
などなど♪
メキシコ音楽好きの友人いわく、『リメンバーミー』に出てくる音楽はどれも一瞬聞いただけで「これは絶対にメキシコ人が演奏してる!」ってわかるんだそうです^^
カタリーナの壁画
これも隠れキャラに近いのですが、実は「メキシコで最も愛されているガイコツ」である「カタリーナ(スペイン語:La Catarina)」も登場しています。
カタリーナは、1913年に当時の有名イラストレーターJosé Guadalupe Posada氏によって描かれた、豪華な貴族の帽子をかぶった「ガイコツ夫人」です。
『リメンバーミー』ではガイコツ・キャラクターとしてではなく、一瞬だけ「壁画」として描かれているのが映し出されます。ミゲルがコンテストの初ステージを終えて彼を探しまわる家族から逃げている時、イメルダおばあちゃんとペピータに行く手を阻まれ、そこから細い道に逃げ込むシーン。その一瞬です。
(↑)ポサダ氏のイラストがそのまま使われているので、すぐにわかります^^
カタリーナは、メキシコではよくモチーフとして使われ様々なグッズになっています。毎年メキシコでは、死者の日が近付くとカトリーナグッズが市場を埋め尽くします。
死者の日には「ガイコツメイク」や仮装をすることが多いのですが、実はあれはこのカタリーナを模しているのです。カタリーナは、死者の日には欠かせない存在です!
聖母グアダルーペの絵
聖母グアダルーペは、簡単に紹介すればメキシコで人気No.1の聖母(=マリア様)です。
メキシコでは、自分や自分の家族のお気に入りの成人や聖母を信仰する習慣があり、数えきれないほどの成人聖母が祀られているのですが、中でもグアダルーペは最も多くのメキシコ人に知られ、人気のある聖母。
メキシコを旅行していると、至るところでこの聖母グアダルーペに出会います。例えば、タクシーの運転手がお守りキーホルダーをぶら下げていたり、道端で壁画として描かれていたり、レストランに絵が飾ってあったり、ホテルのロビーに像が置いてあったり…
そんなわけで、メキシコ好きなら100%知っている&メキシコ人が愛するグアダルーペ。なんと、ミゲルの家でも、祭壇の横に小さなグアダルーペの絵が飾られていました!
これは映像で見ないとよくわからないかもしれませんが…ぜひ、映像でチェックしてみてください!
マリーゴールドの意味
映画の中で最も重要な花「マリーゴールド」。オレンジ色でふわふわとした花ですが、この花も死者の日には欠かせない花。前に書いた記事『マリーゴールドの意味とは…?知られざる「死者の日」の歴史と習慣』でも紹介しましたが、実はマリーゴールドには「死者の世界から、死者を祭壇まで呼んでくれる」という言い伝えがあるのです。
実際、映画『リメンバーミー』の中で、「生者の国」と「死者の国」を繋ぐのはこのマリーゴールドの花でできた巨大な橋でした。「許し」をもらって生者の国に戻る時に必要になるのも、マリーゴールドの花びら。やっぱり、この二つの世界を繋ぐ役はこの花でないといけないんです!
(ちなみに、この死者の国側はメキシコシティの近くにある「テオティワカン遺跡」にそっくりです。↓)
死者の日のメキシコは、市場も家の前も祭壇もお墓も、すべてがマリーゴールドまみれになります!ハロウィンとよく混合される死者の日ですが、ハロウィンのオレンジが「パンプキンオレンジ」だとしたら、死者の日のオレンジは「マリーゴールドオレンジ」なのです^^
そして不思議なことに、マリーゴールドを「生と死を繋ぐ花」としてみる風習は、メキシコだけでなくアフリカやアジアなど、世界中の先住民の神話や言い伝えに点在しています。これは偶然?それとも…本当に、なにか不思議な力を持った花なのかもしれませんね^^
ショロ犬の意味
ミゲルの相棒犬・ダンテ。毛のないこの犬は、メキシコ原産の「ショロ犬(別名:メキシカンヘアレスドッグ)」という犬で、古代メソアメリカの時代からメキシコの人々に長ーく愛されてきた、伝統的な古代犬種です。
by Xoloitzcuintli:CC BY 2.0
↑ほぼリアル・ダンテ。(笑)
メキシコ原産の犬は、他にもチワワがいますが、ダンテは絶対にチワワではなくて「ショロ」でないといけませんでした。なぜなら、マリーゴールドと同じように、ショロ犬にも「人の魂をあの世へ導く役目」があったからです!
古代メソアメリカ文明(アステカやマヤなど)では、ショロ犬は人間にとって最高の相棒であり、「一人一匹はショロを飼う」風習もありました。毛がなく体温をじかに感じられるので、寒い冬には湯たんぽのようにともに寝て人々を癒やし、人間が死ぬ時には、その者に寄り添い、魂を届けていたのです。
ミゲルが死者の世界に迷い込んでしまったとき、ダンテだけにはミゲルのことが見えたのには、そんな理由があったのです!あれはただ単に「動物には見える」という意味ではなく、もしダンテがチワワだったら見えなかったかもしれません。(笑)
舞台になった(実在する)メキシコの街
実は、サンタセシリアの街(生者の国)と、死者の国には、モデルとなったメキシコの街が存在します!!それが、「グアナファト」、「オアハカ」、「ハニッツィオ島」。制作チームはこれらの場所に通い、『リメンバーミー』の構想を練ってきました。
(↑)グアナファトの街並み
死者の国は、グアナファトの街の立体感のある街並みと魔法のかかったような夜景を参考にし、死者の日のお墓や伝統は、オアハカとハニッツィオ島の死者の日の様子を、そしてミゲルの住む「サンタセシリア」の町は、オアハカの小さな町がモデルになっています。
さらに細かく言えば、町だけでなく部分的にモデルになった「場所」もあります。例えば、ミゲルが閉じ込められた地下洞窟はユカタン半島にある「セノーテ」という地下泉だし、
(↑)本物のセノーテ。
ミゲルとヘクターがチチャロンに会うために階段を下っていくシーンの場所は、テオティワカン遺跡の「ケツァルコアトル(羽毛の生えたヘビ)神殿」にそっくり。
さらに、死者の国で最初にミゲルが連れていかれる豪華な建物は、メキシコシティの郵便局(本当に素晴らしい建築なんです)がモデルになっています。
(↑)モデルになったメキシコシティの郵便局
モデルになった街や場所については、他の記事で詳しく書いたので最後にリンクを張っておきます^^
登場するメキシコ民芸品
これはわたしの好みなのですが、この『リメンバーミー』にはメキシコの民芸品がたくさん出てくるんです!!
アレブリヘ
ペピータのような「アレブリヘ」は、実際にメキシコのオアハカ州の3つの村で職人たちによって作られています。
伝統衣装
登場人物が来ている服もメキシコらしいものや民族衣装テイストのものが多いです。例えば、フリーダカーロが着ているカラフルな服は、オアハカ州南部の「フチタン」「イスモ」「テワンテペク」と呼ばれるエリアの女性が着る「ウイピル」と呼ばれる貫頭衣(マヤ系に多い伝統衣装)です。
ミゲルのママは、オアハカ州中央部の「サンアントニーノ村」の伝統的な刺繍の服のシンプルなタイプを着ています。
伝統的なデザインは、以下のもの。最近は、ママが着ているような簡易バージョンも多いです。
さらに、ママ・ココ(車いすの一番お年寄りのおばあちゃん)は、プエブラ州のプエブラドレスを着ていました。(↓)
このように、映画を細か~く見ていくと、毎シーン本当にたくさんの「民芸品」や「伝統衣装」が出てくるので、メキシコ好き・メキシコの手仕事好きとしてはワクワクしっぱなしでした^^
この「リメンバーミーに登場する民芸品」についても、他の記事でかな~~り詳しく書いているので、興味のある人はどうぞ。(リンクは最後)
まとめ
以上、リメンバーミーの隠れキャラ、知らなかった秘密、『リメンバーミー』からわかるメキシコ豆知識について紹介しました!
本当に、細かく知れば知るほど奥深く、「とても考えられて作られている映画なんだなあ」とピクサーの創造力と工夫、そして熱心なこだわりに心から感動しました。スタッフのセリフで印象に残っている言葉がいくつかあるので紹介します。
「(これは)メキシコを賛美した映画よ。現地の人に、自分たちの映画だと思ってほしい。」
「メキシコの人たちがどう感じるかが大切だ。」
「メキシコの人が映画を見て納得するようなものにしたかった。本物らしさを追求したい。」
ここからもわかるように、スタッフたちは数年間の彼らの人生を、メキシコを描くこと、そしてそれがメキシコ人にとっても大きな価値になるよう全力を注いできました。
そんな彼らの情熱と努力が実り、『リメンバーミー(Coco)』は公開後すぐにメキシコのアニメーション史上最大のヒットとなり、多くのメキシコ人に絶賛されました。さらにその後、なんと「メキシコの映画史上No.1の映画」にまで輝いたのです!
そのような背景を知って、わたしもリメンバーミーがさらに好きになりました^^ピクサーらしい遊び心は忘れず、でも真剣に文化とテーマに向き合う。映画『リメンバーミー』は、そんなピクサーらしさを最大限感じられる作品だったと思います。
以上。長い記事を読んでいただき、ありがとうございました!!
追記
リメンバーミーのDVD&Blu-rayも販売されているのですが、そこに入っている「ボーナス・コンテンツ」のディスクが素晴らしく、感動するほど内容が充実していて、
- 本編ではわからなかった裏話
- 未公開シーン
- 秘密
- スタッフの苦労話
などなど、たくさん語られていました。
この記事内で紹介した一部はそのボーナスコンテンツで知った情報も含まれています。とても面白いので、リメンバーミー・ファンの人にはとてもおすすめです^^
リメンバーミーについては、今までもいろんなテーマで記事を書いています。興味のある人は、こんな記事もチェックしてみてください^^