メキシコの文化

世界一怖い音?!「アステカの死の笛」はまるで人間の断末魔。

メキシコ文化好き、古代文明好き、オカルト好きなら目がキラキラしちゃいそうな出土品「アステカの死の笛」。

人間の頭蓋骨を模した恐ろしい見た目と、まるで死の間際の叫びのようなゾッとする音色から、世界中の注目を集めています!

今回は、そんな未知のアイテム「アステカの死の笛」について紹介します!

いまだ発見数がものすごく少ないので、有効な研究ができず、いまだ多くの部分が謎に包まれています。

アステカの死の笛とは

1999年、メキシコの首都メキシコシティの三文化広場にある「トラテロルコ遺跡」のアステカ神殿で、考古学者らによって発見された「頭蓋骨の形をした陶器の笛」です。

トラテロルコ遺跡

三文化広場

大都市メキシコシティの中にある、人気の観光地の一つです。

約500年前の1521年8月13日に、アステカ軍の第11代皇帝クアウテモックがスペイン軍の征服者エルナン・コルテスに敗れた場所として知られています。

その遺跡から発掘されたのは、20歳の首を切られた男性の生贄。その男性が持っていた楽器の中の一つが、その後有名になる「アステカの死の笛(Aztec death whistle)」でした。

アステカの言葉ナワ語では「Ehecachichtli(エヘカチクトリ)」、スペイン語では「El silbato de la muerte azteca」と呼ばれています。

特徴は、「ゾッとする断末魔の音色」

その特徴は、あまりにも恐ろしいその笛の音色。

まるで、人間が死の間際にあげる断末魔のような、世にも恐ろしい金切り声を発するんです。

米ニューヨーク・ポスト紙は、”the most terrifying sound in the world”(世界で最も恐ろしい音)として紹介しています。参考:”This is ‘the most terrifying sound in the world’ — hear the Aztec Death Whistle

発掘当初、研究者たちは最初はこの骸骨の冬季をおもちゃか何かだと思っていたのですが、15年後(2014年ごろ)にこの陶器に息を吹き込んでみたところ、恐ろしい音を発し、この陶器が笛だということが初めてわかったんだそうです。

人気YouTubeチャンネルのアクション・ラボの、ジェームズ・オーギル氏は、この笛の音色をこのように説明しています。

“The sound that the death whistle makes innately strikes fear into your heart,”

「本能的に、人の心に恐怖をもたらす音」と。

YouTubeでも聞くことができます!※本当に通報されるレベルで人の叫び声に似ているので、音量注意です。

0:50あたりから、実際の音色が聞けます。

先住民音楽を研究者で、自身もアステカの血を引く、ロバート・ベラスケス氏は、死の笛を「死の笛は普通の楽器ではなく、苦痛に鳴き叫ぶ人の声や千人の死者が叫ぶ声を出す」と説明しています。

本当に、笛とは思えない、人の声にしか聞こえない。ゾッとする音ですよね!!

「悲鳴の音」は人を不安にさせる

悲鳴など、音が粗いほど人々は不快感を強く感じることが研究でわかっています。

ニューヨーク大学教授で神経科学者のデヴィッド・ペッペル氏は、研究仲間と15年間「恐怖による叫び声」と「その他の大声」を区別するメカニズムの研究を行いました。100本以上のホラー映画などを分析した「悲鳴の研究(2010)」では、叫び声が「粗い音質」であるほど、さらに「変則的で秩序がない」ときほど不快感を感じ、無視できなくなるのだそう。

人間の会話の大きさの変動は1秒あたり4~5倍であるのに対し、悲鳴の変動は1秒あたり30~150倍。

変動がおおきい(=粗い)音を聞いた時は、脳の中で恐れのような感情的な反応を処理する「扁桃体」にも血液が送り込まれたそうです。

粗い音は、人間に本能的に不快にさせ、不安にさせる効果があるということ。

それを応用して、車のクラクションや防犯アラームなどにも、悲鳴の粗さと同じ音響特性をもつ音が使われています。

このアステカの死の笛の音にも、明らかに人の悲鳴と同質の「粗さ」があり、つい本能的に反応してしまう音響を持っていると言えるでしょう。

死の笛は、何のために作られた?

この恐ろしい「死の笛」は、何のために作られたものなのでしょうか?

敵兵戦意喪失のため?

よく知られている説は、「戦闘時に相手敵兵の戦意を喪失させるため」というものです。

断末魔のような人間の叫び声には、誰しもが本能的に反応してしまうもの。

アステカはものすごく血の気が盛んで、戦争をよくしていたことで有名ですが、そんなアステカの何百人もの戦士たちが笛を一斉に吹くことで、敵軍に精神的なダメージを与えようとしていた、という説があります。

実際に、こんな音がたくさん敵の方から聞こえてきたら、「味方がどんどんやられていっている」という印象を持ちそうなものですよね。

宗教的儀式に使う道具として(有力)

しかし、実際に発掘されたオリジナルの死の笛を調査した音楽考古学者のアルンド・アジェ・ボトスは、実際に発せられる音は断末魔のような音とは全く違い、どちらかというと「風の起こす音」に似ていると報告しています。

具体的には、街を通り抜ける夜風のような、風の起こす奇妙な音です。

実際、死の笛は、風の神「エヘカトル(Ehecatl)」を祀る神殿内で発掘されています。

そのため、学者の間では「風の音を模倣するためのもの」や「儀式に風を呼ぶためのもの」ではないかという仮説が立っています。

また、この笛に関する古文書などの記録はほとんど存在していないのですが、

1913年にスコットランドの民俗学者でありオカルト研究者でもあるルイス・スペンスによって書かれた『メキシコとペルーの神話』という本で、少しだけ触れられています。

“The most remarkable festival in connection with Tezcatlipoca was the Toxcatl, held in the fifth month. On the day of this festival, a youth was slain who for an entire year previously had been carefully instructed in the role of victim… He assumed the name, garb, and attributes of Tezcatlipoca himself… [as] the earthly representative of the deity…. He carried also the whistle symbolical of the deity [as Lord of the Night Wind], and made with it a noise such as the weird wind of night makes when it hurries through the streets.

翻訳:「テスカトリポカ(Tezcatlipoca)に関連した最も注目すべき祭りは、5月に開催されるトシュカトル(Toxcatl)でした。この祭りの当日、ある若者が殺されました。その若者は殺されるまでの一年間、生贄としての仕事を教えられてきました…彼は、テスカトリポカ自身の名前、服装、属性を受け継ぐかのように振舞いました…彼は、地上の代表者として、また「夜風の主として」、神の象徴である笛を持ち、夜の奇妙な風が通りを駆け抜けるときのような音を立てました。」

pp.69-70

この「笛」こそが、アステカの死の笛だろうと考えられています。

ちなみに「テスカトリポカ」とはアステカ王国において信仰されていた、闇を支配する強大な神。古代アステカの時代には、毎年5月にこの神をたたえる盛大な儀式が行われていました。

テスカトリポカ

余談ですが日本で2021年に話題になった小説『テスカトリポカ』でも、「死の笛」が少しだけ登場しています。

テスカトリポカ』は「山本賞」や「直木賞」といった2つの大きな賞を受賞した話題作で、とても面白かったので個人的にもおすすめです!

ここでも、戦闘中ではなくて「宗教儀式の中」で使われていることが記録されています。

実際に死の笛が見つかった1999年より「85年近くも前」に書かれている本の記載なので、ある程度信ぴょう性はありそうです。

ちなみに、よく言われている「何百人もの戦士が、戦争時に敵を恐れさせるために使った」という主張には、ほとんど根拠がありません。

この笛が、

  • 神殿内で発見されている
  • 戦場や戦士の墓では、一切発見されていない

といった事実などから、

現時点で、この笛は、戦争用ではなく「儀式的用途」であった可能性がはるかに高いと考えられています。

が、いまだこの笛に関する情報が少なすぎて、今だ未知に包まれています。

今後、さらにほかの遺跡から死の笛が見つかったり、死の笛について書かれた古文書が見つかったりすることがあれば、さらに解明が進むかもしれませんね!

 

死の笛の造りと、作り方

笛の内部は、ちょうど「人間の喉頭」のような形をしています。

死の笛の作り方

笛から発せられる音にはさまざまな周波数が含まれ、人間の叫び声と同じ「1000 Hz」の周波数が強く発生しています。それで、まるで断末魔のように聞こえるんですね!

造りは意外にもシンプルで、アステカの死の笛はDIYでも作ることができます。

作り方

この動画が一番わかりやすくシンプルです。↓

本来、笛作りは「濁りや粗さのない透き通った音」にするのが職人の腕の見せ所なわけですが、死の笛はむしろ粗さをガッツリ引き出した方がそれっぽくなるので、素人でも材料さえ揃えれば作ることができます。

ただ、わたしも自分で作ってみましたが、他の素材で作ろうとしてもかなり難しいです💦

この動画の制作者さんもキャンプションで「いろんな素材で試したけど、この組み合わせじゃないとちゃんと作れなかった」と言っています。ストローの角度とかも調節して作る必要があります。

もしこれを完成した人がいたら、ぜひ報告してください!!

そして「これは作るのムリだw」ってなった人は、買うこともできます!笑

「アステカの死の笛」が買える場所

なんと、日本のアマゾンでも現在買うことができます!

ITZCOEHUA 死者の笛(Amazon)

ちょっとお高めですが、かなり厨二病心をくすぐるアイテム。デザインもなかなか良い。5,000近いレビューがあるのがちょっと笑えます😂

 

参考:The ‘death whistle’‘Death whistle’: cremated example (re)discovered