メキシコ版の絵馬!愉快な風刺画「エクスボト」の魅力

エクスボトとは

エクスボト(Ex-voto)とは、メキシコの奉納画です。「retablo(レタブロ)」、 「lamina(ラミナ)」とも呼ばれます。

奉納画とは、ある宗教の信者が、何かの誓いやお願いをするときやお礼を表すために、聖所(教会やお寺など)に納めるもののこと。

日本人の感覚的にわかりやすく言うと、願い事を書いて奉納する「絵馬」のようなものです。

ただし、エクスボトの場合は、教会に「事後報告」をするために描かれます。つまり、なにか神様にお願い事をして、その後の結果報告のためにエクスボトがあるのです。

伝統的なエクスボト

メキシコは、国民の多くがカトリックのキリスト教なので、エクスボトには、キリストや聖人、聖母マリアが描かれます。

一般的なものは、ブリキの板に病人と聖母マリアが描かれ、その絵の脇に「身内の病気が治りました、神様ありがとう」という手書きがしてあったり、
畑に立つキリスト教が描かれ「今年の干ばつの際、私の家の畑の被害はこれだけで済みました。感謝します。」と書いてあったり、といった感じです。

実はこのエクスボト、外国人ファンも多く、「メキシコの民芸品(アルテサニア)」として注目を浴びてきています。その魅力とは、なんなのでしょうか?

エクスボトの魅力

エクスボトは、ヨーロッパや他のラテンアメリカの地域にもあります。しかし、メキシコのものが人気なのはなぜなのでしょうか?

素朴な絵

メキシコのエクスボトの魅力は、まずその素朴な絵です。

エクスボトを描くのは、絵描きだけではありません。プロのレタブレロ(エクスボト職人)もいますが、一般の人も描きます。

ヨーロッパのエクスボトはプロによるものが多いので、しっかりした「美術作品」のような出来ですが、メキシコのレタブロに描かれる絵は、どれもとても素朴なんです。(もちろんヨーロッパ風のものも存在します。)

見ていてほほえましい気持ちになります。昔のメキシコの一般庶民のあいだでは、識字率も低かったのですが、「絵」という方法であれば、だれでもエクスボトを奉納することができました。

昔の人々のことを知れる

そして、昔のメキシコ人について知ることができるのも、エクスボトの魅力です。

エクスボトに描かれるのは、家族のこと、健康のこと、仕事のことと、人々の暮らしに密着した内容です。なので、数百年前からの「一般庶民」がどんなことを考えていたのか、どんな暮らしをしていたのかを知ることができるのです。

メキシコ人の遊び心が満載

実は、最近のエクスボトは「奉納画」としてよりも、遊び心溢れる「風刺画」として注目をあびています!

例えば、

  • 包丁を持っている女性の絵に、「神様、わたしは浮気性の夫が今浮気で忙しくて家にいないことに感謝します。もしいたら、おそらくキッチンにある包丁で刺してしまうと思うから。ああ神様、私を犯罪者にしないでくれてありがとう。」
  • 裸でベッドにいる男女と、それを見守るキリストの絵とともに、「○年●月○日 神よ、ぼくが親友の彼女と何度も浮気しても、誰にもバレなかったことを心から感謝します。」
  • プロレスで盛り上がっている女性の絵と共に、「聖なる悲しみの母よ。私は●月○日、最前列で大好きなプロレスを見ていたら、巨大レスラーが私の上にぶっ飛んできたのですが、目が覚めると病院にいてあばら数本と両腕の骨折、あと巨額の治療費だけで被害がすんでいました。本当に感謝いたします。」

といった調子。

絶妙なセンスで状況を皮肉る風刺画がとても多く、見ると吹きだしてしまいそうなものも。

不真面目な内容と、神に捧げる風のシリアスな文面とのギャップが、多くの人の心をつかんでいるようです。

日本だと、「神様に奉納するもので遊ぶなんて、不謹慎だ!」と怒られてしまいそうですが、メキシコではこれが大人気。おちゃめなメキシコ人の遊び心溢れる、とてもメキシコらしいアルテサニアです。

エクスボトの写真一覧


エクスボト職人の中でも「巨匠」といわれる、ビルチス氏の作品です。


左の方に、トランプ大統領がいますね…。タイムリーな話題も、エクスボトのネタとして拾い上げられます。


こちらは、立体バージョンのエクスボトです。


売春婦や浮気など、「世の中のタブー」を題材にしたエクスボトはとても多いです。
他にも、ルチャ・リブレ(メキシコのプロレス)やお酒(主にテキーラ)など、メキシコの一般庶民が大好きなものはよく描かれます。


フリーダ・カーロの生家に飾ってある、彼女が個人的に集めたエクスボトのコレクションです。
フリーダ・カーロは、生粋のメキシコ雑貨(アルテサニア)好きとして有名でした。

エクスボトの産地

エクスボトは、教会があるところでならばどこでも見ることができます。

「手に入れる」となると、メキシコシティーが最もおすすめです。

エリア

街名

Mexico City(メキシコシティー)

毎週日曜にラグニージャで開催される「泥棒市場」には、エクスボト職人の中でも「巨匠」といわれるAlfredo Vilchis(オルフレッド・ビルチス)氏の露店も出ます。

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