メキシコの仮面はおもしろい!⑧「水木しげる」という仮面コレクター

メキシコにいたとき、日本人の「メキシコ仮面好き」に数人出会ったのですが、そのうちの一人が、

自分は元々は水木しげるの大ファンで、水木しげるが仮面のコレクターで、それでメキシコ仮面の存在を知った!

と話していて、びっくりしました。水木しげるといえば、あの「ゲゲゲの鬼太郎」の作者です。

しかし、気になって、「水木しげる メキシコ」でググってみるも、まったく情報が出てこない!

一冊だけ本の情報が出てましたが、日本に帰らないと手に入らないようだったので、そのまま忘れてしまっていました。

メキシコに行った水木しげる

先日、なんと偶然にもその本を図書館のメキシココーナーで見つけました!

お宝を見つけたようなワクワク気分で、さっそく借りて読んでみました。

本の内容は、1997年だから、ちょうど20年前に水木しげるがメキシコに行った時の話です。

2週間程度の旅だったようですが、メキシコシティー、オアハカ、タスコ、モレーリアと、メキシコ中を本当にあちこち動きまわっています。

そして、いろんなところで、気に行った仮面やフォークアートを買いまくる!!!という感じの話でした。

水木しげるの好きな仮面・嫌いな仮面

水木しげるのことについてわたしはよく知らないのですが、この本を通して、「彼の好きなメキシコの仮面の傾向」はなんとなーくわかりました。

彼の好きな仮面は、こんなもののようでした!

1.愛嬌とバカバカしさがある仮面

彼は、文中で何度も「怖いだけではダメで、愛嬌やバカバカしさがないといけない」といっていました。

そして、「その愛嬌やバカバカしさというのは、職人の遊び心や個性から引き出されるものだ」、と。

この部分には、とっても共感しました!

仮面は、好きではない人から見ると全部同じで気味が悪く、むしろ怖いです。(わたしも昔そっち派だったので…)

しかし、よ~く見ていると一つ一つの仮面の奥から、じわじわと楽し気で子供っぽい、憎めない空気が伝わってくることがあります。

そんな仮面は、やっぱり一目で愛着がわいてしまって、「よし家に連れて帰ろう」ってなってしまうので、水木しげるもそうだったんじゃないかなあ~、と思いました。

2.空想上の生き物や、悪魔、天使など

これは、こちらの記事(メキシコの仮面はおもしろい!⑤ 仮面をかぶると何が起こるのか?)で少し話したのですが、仮面には、「目に見えない存在を表現する」という役割があります。

水木しげるは、やっぱり、「妖怪」という目に見えないものを描く者として、特にそういうものが好きだったようです。

たしかに、「空想上の生き物」というのは、職人ごとに個性が表れ、多様なのでとても面白いデザインが多いです。

逆に、だれにでも姿が分かっている「人間」をそのままモチーフにした仮面はあまり好きじゃないようです。

なので、この記事(メキシコの仮面はおもしろい!② 仮面は優秀なストーリーテラー!)で紹介したような、植民地化した時のスペイン人の顔の仮面とかは全然気にいらなかったようでした。

これはこれでストーリーを知れば面白いんですが、水木しげるはそんな背景よりも何よりも「自分の直感」を頼りに探していたようですね。

3.高い技術をもって作られた仮面

仮面は、複雑な形状になるほど技術が要り、頭を使って彫る必要があるし、経験も必要です。

本の途中に、カラーの仮面コレクションの写真集ページが30pほどあったのですが、ここで見たコレクションは全体的に凝った作りのものが多くてびっくりしました。

逆に、「商用」のシンプルなデザインの仮面は全然ピンとこなかったようで、しっかり立体的に、高い技術と職人の魂、そして遊び心が込められた仮面を選んでいたようでした。

水木しげるの仮面コレクションの中で、わたしが気になった仮面

仮面コレクションの写真集ページに載っていた中で、いくつか気になった仮面があったので少し紹介します。

1.骸骨がサカサマに顔に張り付いたディアブロ(悪魔)

これは、写真を見ないとなんともピンと来ないような気がしますが、わたし的に一番面白いと思った仮面です!

鼻の部分に生き物を取り入れるタイプの仮面は、ゲレロ州でたくさん作られます。
参考:メキシコの仮面はおもしろい!④ 仮面の「鼻」を見てみよう

この仮面もゲレロ産のようですが、しかし、こんなに大胆に、しかも「全身のガイコツ」が顔にさかさまに張り付いているのは、今まで見た事もないし、とっても珍しいデザインだと思いました。

職人の奔放さが爆発しているというか、なんというか…とにかくイイ仮面だなあ~と思いました!ぜひ、生で見てみたいです!

2.赤ん坊の骸骨

シンプルなガイコツの仮面は数あれど、「ガイコツの赤ん坊」という謎の仮面も初めて見ました。

ガイコツなのに、ダークさや怖さは全然なく、間抜けさとほんわかした空気が伝わってくるような変わった仮面でした。

3.ビーズ全面貼りの仮面

水木しげるが、なんと当時のレートで「12、13万円」という、超絶強気な値段で買った、ビーズ全面貼りの仮面。

これは、一見「ウイチョール族」という民族が作ったビーズアートにとてもよく似ている(参考:虹を凝縮したようにカラフル!ウイチョール族のビーズアートのですが、これを買ったときのエピソードを見ると、「モレーリア(ミチョアカン州)の仮面職人」から買っていて、工房にあった他の仮面には、ビーズがついていないようでした。

ウイチョール族の人は、だいたいビーズアートを作る人はひたすらビーズアートを作りまくるのに、「工房に一つしかビーズアート作品がなかった」というのはおかしいので、おそらくこの仮面職人さんはウイチョール人ではないんじゃないかと思いました。

そのうえで可能性を考えると、

  • 仮面職人が見よう見まねでウイチョール族のビーズアートを真似した
  • 木彫りだけして、ビーズの張りつけはウイチョール族の知人に頼んだ

のどちらかかなあと思います。

それに、ウイチョール族が作っている仮面の形ともかなり違っていたので、ふたつの説は濃厚です。

それでも、今でも12,13万円の仮面なんてほぼないので、当時のレートを考えてもちょっと高すぎかなあ…「これもしや、ぼったくられているのでは…」と一瞬思いましたが、この仮面は値段を見ずに買ったようで、「お金のことは全く気にしていない」ということがわかり、ちょっとホッとしました。(笑)

そんな、「欲しいものはいくら出しても買う!!」という水木しげるスタンスはすごいし、同時にとてもうらやましくなりました。(笑)

あと、「木彫り仮面職人×ウイチョール族のコラボって、アリだなあ…」と。

4.おたふく天使

水木しげるもやっぱり買ってました!!

あの、おたふく仮面を!!(参考:メキシコの仮面はおもしろい!③ どこにでもいるアイツは誰だ

やっぱり、20年前もどこにでもいたのかあ~」と思うと、なんだか、嬉しくなりました。

水木しげるの、メキシコ仮面を見る目

水木しげるは本の中で、メキシコの仮面を見たとき、「これは天使ですよ。」とか、とにかくいつでも「これは〇〇です。」と言い切っているのですが、それがほとんど毎回ちゃんと当たっていることにとても驚きました。

何も勉強しなくても、分かる人にはわかるんだなあ~と感服。

わたしもそんな「」を養っていかねば!と思わされました。

最後に

わたしに水木しげるとメキシコの仮面のつながりを教えてくれた人は、

「水木しげる ⇒ メキシコ仮面」

と行きついて、仮面を好きになったようですが、わたしはその逆の順番で、仮面から行きついて水木しげるについていろいろ知りました。

同じような仮面でも、「そんな見方があったんだなあ~」と驚かされることばかりで、とてもおもしろかったです!

 

そんなわけで、今一番気になっているのが、

この水木しげるが買った約100個の仮面コレクションはどこにあるのか?」ということです。

本の中では、「妖怪博物館を作って、そこに全部飾ろう」と話しているエピソードがあったのですが、「妖怪博物館 水木しげる」でググってみても、何も出てこない…

鳥取にあるらしい「水木しげる記念館」にあるのでしょうか?

とにかく、彼のメキシコ仮面コレクションがある場所を、もし誰か知っている人がいたら、教えてくださいm(_ _)m(笑)

参考文献:大泉実成, 水木しげる(絵)(1999)『幸福になるメキシコ』祥伝社